研究課題
本開発研究は「車載用小型熱発電システム」の基礎要素技術開発であり、(1) 熱伝導を可変できる熱電池基板構造導入によるMg2Si熱電池発電能力向上、および(2) 熱発電専用高昇圧DC-DCコンバータ開発を実施した。熱伝達制御型基板開発では、有限要素法を基礎とする熱流体解析ソフトをベースとして、熱伝達制御型基板構造を展開でき、温度分布、熱流束分布をもとに電流が流れることで生じるジュール熱、トムソン発熱、ペルチェ吸発熱を実装した熱-電気連成解析可能な熱電発電特性評価高精度シミュレーターを試構築した。試作した熱電池での精密発電特性評価値とシミュレーター値の精度向上を実施し、実測値に対して92%以上の精度でのモデル計算環境を実現した。熱伝達制御型基板では、伝熱制御パラメータであるサーマルビア径および内層配線層数を変化させた基板を試作し、基礎伝熱特性を把握した。熱電池に接続することに特化した電力変換回路は、熱電池の低電圧出力特性を補う高い昇圧機能を備えた回路が望ましい。そこで、インターリーブ方式の高昇圧型DC-DCコンバータを提案した。本年度は、高温環境で動作可能かつ低オン抵抗のガリウムナイトライド(GaN)スイッチングデバイスを用いた回路の基本動作検証を行った。まず、回路設計ソフトを用いて高昇圧型電力変換回路のSchematic図を設計した。次に、PCB図の設計データに基づき基板加工機を用いて回路実装を行った。最後に、熱電池の出力特性を模擬電源で再現し、本回路の動作を検証した。本回路は、電流および電圧センサを用いて熱電池(模擬電源)の出力電力をセンシングし、車載用マイクロコンピュータを用いて最大出力電力点を追従する仕様である。電子負荷を用いて48Vバッテリを模擬し、100W程度の入出力電力で実験を行い、電力変換効率および電力利用率が共に85%以上となることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
熱伝達制御型基板構造に関する開発内容では、熱電発電特性評価高精度シミュレーション環境の構築、基礎熱電発電モジュールの精密発電特性測定とシミュレーション高精度化へのアルゴリズム開発・修正、シミュレーションによる発電特性・熱流量による損失の評価、熱伝達制御型基板の基礎設計および第1次試作を実施した。DC-DCコンバータ開発での本年度の目標は、実験環境の構築と、GaNスイッチングデバイスを用いたインターリーブ方式高昇圧型DC-DCコンバータの基本回路動作検証であった。まず、実験環境の構築については、熱電池の出力特性を模擬電源で再現し、電子負荷を用いて48Vバッテリへの電力供給を模擬した。高昇圧型DC-DCコンバータの基本動作検証については、回路実験において、本回路の電力変換効率および電力利用率が共に85%以上(最終目標値は95%)となることを確認し、次年度以降、最適化回路設計により性能向上へつなげる下準備が整ったと考えている。
熱伝達制御型基板構造に関する開発では、2019年度に構築したシミュレーターを用いて、熱伝達制御型基板のパラメータであるサーマルビア径および内層配線層数の最適な条件を算出しながら、実際の熱伝達制御型基板試作と試作基板から得られる実測値との比較によりシミュレーター制度をさらに向上させる取組みを実施する。2020年度中には最適なサーマルビア径および内層配線層数を具備した基板の試作を行い、熱伝達率を制御し伝熱応答性改善する熱電池への実装に進めるようにする。さらに、熱電池製作時に必要な発電素子について、基板熱伝導特性に整合して高出力を担保できる調合パラメータによりMg2Si原料を作製する。DC-DCコンバータ開発に関しては、2019年度の研究取組により、実験環境の構築および高昇圧型DC-DCコンバータの基本回路動作検証は完了した。今後は、電力変換効率および電力利用率の観点から本回路の性能を向上させる。具体的には、回路の配線パターンを見直し、電力変換効率を改善する。また、電流センサおよび電圧センサを高感度な素子に変更すると共に、車載用マイクロコンピュータへ実装する最大電力点追従制御のアルゴリズムを見直し、電力利用率を向上させる。これらの取組を通じて、最終的には電力変換効率および電力利用率が共に95%以上の達成を目指す。
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Transactions of ISCIE
巻: 33 ページ: 24-30
10.5687/iscie.33.24
Journal of Signal Processing
巻: In press ページ: In press
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