研究課題
本開発研究は「車載用小型熱発電システム」の基礎要素技術開発であり、(1) 熱伝導を可変できる熱伝達制御型基板構造導入によるMg2Si熱電池発電能力向上、および(2) 熱発電専用高昇圧DC-DCコンバータ開発を実施した。Mg2Si熱電池発電能力向上では、Mg2Si原料の溶融合成プロセス中にC・Sb・Znの3種類の添加不純物をそれぞれ0.1at%から1.0at%の範囲で調合し、熱電気的特性を調整する不純物調合としてC+Sb、C+Sb+Znによる原料合成と発電素子化を行い、基礎伝熱特性を把握した。熱伝達制御型基板開発では、基板の熱伝導特性に整合させるMg2Si原料の熱伝導可変を行った。熱電池の接続に特化した電力変換回路では、2019年度にインターリーブ方式の高昇圧型DC-DCコンバータを提案し、高温動作可能で低オン抵抗のガリウムナイトライド(GaN)スイッチングデバイスを用いた回路の基本動作検証を行った。本年度は、昨年度に実装した回路の高出力化に着手した。具体的には、熱電池を接続した電力変換回路の回路シミュレータを構築し、回路動作検証環境を強化した。次に、各回路部品に対する電流・電圧波形を可視化し、回路部品見直しおよび最適化設計を行なった。続いて、回路設計ソフトを用いて高昇圧型電力変換回路を再設計し、本年度購入したインピーダンスアナライザーおよび現有基板加工機を用いて回路実装を行った。最後に、熱電池の出力特性を模擬電源で再現し、動作検証した。本回路は、電流および電圧センサを用いて熱電池(模擬電源)の出力電力をセンシングし、車載用マイクロコンピュータを用いて最大出力電力点を追従する仕様である。電子負荷を用いて48Vバッテリを模擬し、200W(昨年度100W程度)の入出力電力で実験を行い、電力変換効率および電力利用率が共に90%(昨年度85%)以上となることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
Mg2Si熱電池発電能力向上では、C・Sb・Znの3種類の添加不純物で熱伝導率および発電量(パワーファクタ)の可変が実現でき基板の熱伝導特性に整合させるMg2Si原料の作製目処が得られた。熱伝達制御型基板構造に関する開発内容では、昨年度に引き続き、熱電発電特性評価高精度シミュレーションコードの精査・改良を実施し、シミュレーションによる発電特性・熱流量による損失の評価、熱伝達制御型基板の基礎設計および第2次の基板試作を実施した。熱電池の接続に特化した電力変換回路では、本年度の目標は、2019年度の実装回路と比較して回路性能を向上させることであった。回路シミュレータおよびインピーダンスアナライザーの導入により、回路部品の見直しおよび最適化設計を行い、回路実験において、電力変換効率および電力利用率が共に90%以上(2019年度は85% / 最終目標値は95%)となることを確認した。また、電力変換回路の入出力電力についても200W(前年度は100W)を達成し、前年度と比較して高出力化を達成した。
可変熱伝導管方式熱接合機構の開発について、可変コンダクタンスヒートパイプ(VCHP)による導熱機構の開発を推進する。熱電池の接続に特化した電力変換回路では、これまでの研究取組により、実験環境の構築および高昇圧型DC-DCコンバータの基本回路動作検証は完了した。今後は、電力変換効率および電力利用率の観点から最終目標値(電力変換効率および電力利用率95%以上)の達成を目指す。具体的には、回路の制御方式の改善および回路設計の更なる見直しを行う。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件) 備考 (2件)
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