研究実績の概要 |
本年度は、ポリインの不斉[2+2+2]付加環化反応による、複数の捻れや交差を有するヒュッケルベルト分子およびメビウスベルト分子の不斉合成と結晶構造解析を検討した。ポリインの合成における反応条件を最適化することで、さまざまな環サイズのポリインの合成に成功した。そして、得られたポリインの不斉[2+2+2]付加環化反応により、1〜4つの捻れや交差を有するヒュッケルベルト分子およびメビウスベルト分子の不斉合成に成功した。 これらのヒュッケルベルト分子およびメビウスベルト分子の置換基を検討したところ、良好な単結晶が得られ、それらの分子が有する複数の捻れや交差を、X線結晶構造解析により可視化することができた。さらに、合成したヒュッケルベルト分子およびメビウスベルト分子の分子軌道を計算化学により決定し、実験的に観測された光学物性およびキロプティカル特性と分子軌道との相関を明らかにすることができた。 この成果を論文発表(J. Nogami, D. Hashizume*, Y. Nagashima, K. Miyamoto, M. Uchiyama, K. Tanaka*, Catalytic stereoselective synthesis of doubly, triply and quadruply twisted aromatic belts. Nature Synth. 2023, 2, 888-897)することができた。この論文は国内外から高い注目と評価を得ており、東工大からプレスリリースされるとともに、Chem-Stationにおけるスポットライトリサーチ(複数のねじれを持つ芳香族ベルトの不斉合成と構造解析に成功)に取り上げられた。
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