研究課題/領域番号 |
19H01089
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
柴田 重信 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10162629)
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研究分担者 |
金 鉉基 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (10791874)
高橋 将記 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 准教授 (30711189)
駒田 陽子 明治薬科大学, 薬学部, 准教授 (40451380)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 体内時計 / 時間栄養学 / ライフステージ / 高齢者 / 学童期 |
研究実績の概要 |
ヒトの調査研究では、港区の小学校・中学校で実施した朝食のタンパク質摂取で、大豆と魚(和食)、肉と卵(洋食)、乳製品(シリアル)の3種類の朝食にクラスターを形成できることが判明し、和食は、夜間のスクリーンタイムが少なく、早寝・早起きであったので、和食は早寝早起きと関連する可能性考えた。面白いことにこの早寝・早起きは休日でも続いていることから、和食派は体内時計そのものが朝型であることが分かった。次に、朝食の孤食における調査を行った。まず、家族と一緒に食べる生徒と、孤食する生徒の入眠・起床時間を調べると、孤食の場合、遅寝・遅起きであった。以上をまとめると、因果関係は不明ながら、朝型にするには、朝食時に和食を家族と取る習慣が良いかもしれない。この成果を一般化すべく、20-60代までの一般の男女でWEB調査を行い、今度は、和食、和洋半々、洋食、シリアル・栄養補助食品、欠食について調べた。その結果、この順番に平日も休日も早寝早起きで、想像できるが欠食は遅寝遅起きであった。また、和食と洋食には有意差が認められた。和食が早寝早起きなのは、高齢者が好んで食べる可能性あるので、年齢層分布を調べたところ、和食の方が洋食より若い人が多かった。次に、朝食のタンパク質摂取を調べると、和食は魚、大豆、卵の摂取が高く、洋食とシリアル系は乳製品の摂取が高く、肉製品には差は見られなかった。この結果は港区の小学生のデータと非常に似ていることから、一般化出来ることが分かった。 さらに、一般化のため、就労者約4500名程度へのWEB調査を行った。その結果、朝ご飯が和食派は早寝早起きであった。さらに、食事のバランスが良い、朝ご飯多めで、夕ご飯少な目、塩分少なく野菜多め、精神衛生として生活や仕事に対する不安が少なめであった。このように、就労者でも、和食の朝食を取ることは健康的な食生活に寄与している可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト研究では、小学生から得られたデータの汎用性を求めるべく、一般の広い年代の人々を対象に、確認調査を行った。その結果、朝食の和食派が早寝早起きで、かつ朝食時にバラエティーに富んだ食材からタンパク質を得ていることが明らかになった。タンパク質は素材ごとにアミノ酸組成が異なることことから、和食が魚、大豆、卵からタンパク質を摂っていることは、非常に興味が持たれた。さらに就労者を対象としたWEB研究まで拡大し、新しい知見が得られた。まず、このような母集団でも、和食派が早寝早起きであることが分かった。つまり、和食と朝型は非常に一般性のある事実である。さらに、和食派は運動量が多く、御飯量、塩分、野菜、バランスのいずれの項目も和食派は勝っていたので、これを広く社会還元すべきであると考えている。また、今回、女性特有の生理と睡眠と月の周期との関連性を見出すことが出来た。成熟した女性の月経周期は29.5日であるが、天体の月の位相がヒトの生殖リズムや睡眠に及ぼす影響は明らかではない。女性の月経開始と主観的睡眠の質ならびに月の位相(満月=明期、新月=暗期)との関連性を「ルナルナ」で調べた。明期に月経が始まった群では、暗期に月経が開始した群に比べてgood sleeperの割合が有意に高く( p = 0.02)、暗期に月経が開始した者ではpoor sleeperの割合が有意に高かった(p = 0.01)。 直近2回の月経開始日における月相の組み合わせ(明期、暗期、中立期)で分類すると、「両方とも明期」群で最もgood sleeperの割合が高かった。暗期での月経開始は、その後の主観的な睡眠の質の低下と関連していた。したがって、月経開始と月の位相の関係を把握し睡眠障害にならない工夫をすること重要性が提案できた。さらに、論文発表も順調にされており、社会的発信においても十分に実行されている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に菊芋やイヌリンの摂取が腸内細菌に有益な作用をもたらすこと見出した。これらの水溶性食物繊維は、腸内細菌の多様性や善玉菌の増殖に役だち、便通を良くすることも知られている。一方、高齢者などは、便秘改善に塩類下剤の頻度が高く、MgOは非常に良く用いられている。そこで、今年度は、両者の併用時の腸内細菌への影響を調べるとともに、時間薬理学観点からMgOの投与時刻による影響についても調べる。また、エネルギー代謝異常で出現する、肥満や糖尿病に時間栄養の知識が大いに役立っている。一方で、高血圧や心疾患にかかわるであろう、塩分摂取の時間栄養学視点の研究はほとんどされていない。そこで、マウスと人を対象に研究を開始する。マウスでは、NaCl やKClを配分等を変えて、朝もしくは夕に投与し、24時間の尿中排泄について調べる。この場合重要なことは、Na/Kの比を求めることである。ヒトの場合も、NaClの1日の摂取量は6.5g以下にし、逆にKClは3.5g以上取ることを推奨している。仮説的には、腎機能が低下する夕方の高塩分摂取は排泄がうまくいかず、24時間以内に十分に排泄されない可能性があります。一方、朝食時で塩分摂取は速やかに排泄され24時間以内の蓄尿でも観察されると期待される。一方、ヒトの研究では、「あすけん」アプリを使用し、朝、昼、夕の食事の塩分摂取量を調べ、同時に最高血圧と最低血圧を回答していただき、血圧への塩分摂取の影響が関与するか、また関与するとしたら、1日のトータルの摂取量、朝の摂取量、夕の摂取量のいずれが関わるかを明らかにできる。また、KClの摂取量も調べているので、NaClの関与と同様に、血圧を下げる方向にいずれの時間帯の摂取が有効か否かについて調べる。また、夜食を含む間食のセカンドミール効果のメカニズムを明らかのする研究を引き続きマウスとヒトでおこなう。
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