研究課題/領域番号 |
19H01209
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
樋笠 勝士 岡山県立大学, デザイン学部, 特任教授 (10208738)
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研究分担者 |
岡本 源太 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (50647477)
田中 均 大阪大学, COデザインセンター, 准教授 (60510683)
井奥 陽子 東京藝術大学, 美術学部, 助手 (60836279)
津上 英輔 成城大学, 文芸学部, 教授 (80197657)
小田部 胤久 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80211142)
高橋 陽一郎 日本大学, 文理学部, 教授 (80333102)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 虚構論(フィクション論) / 複数世界論 / 詩学 / 修辞学(弁論術) / バウムガルテン |
研究実績の概要 |
本研究はテーマに沿ってチームをつくり、個人研究の活動と共にチーム研究の活動として相互に研究成果を検証しあう体制をとった。チームAは「詩学的虚構論の系譜的研究」(樋笠、津上, 堀尾)、チームBは「複数世界論の系譜的研究」(岡本, 小田部、大橋)、チームCは「詩学的虚構論と複数世界論の交叉の研究」(樋笠,井奥、桑原)、チームDは「交叉の行方の研究 」(田中, 高橋)である。 4月に研究概要説明会を開催し、6月にはチーム別研究計画や個別研究、翻訳計画、11月開催予定のシンポジウム計画についての全体協議会を開催した。 11月の全体研究集会・公開シンポジウムでは、チームAから研究協力者の堀尾(「古代弁論術の伝統とフィクションの起源」)、チームCから分担者の井奥(「ヴォルフ学派における天体の表象」)が、チーム及び個人の研究成果として発表し、ゲスト講演者長尾伸一氏(名古屋大学)の「初期近代における複数世界論の展開と多様性」の提題発表を交えて、本研究のテーマの価値と展開について理解を深めた。なおこの全体集会時に研究協力者の最新の海外研究報告により、従来バウムガルテンの心理学研究を行っていた海外研究者が、18世紀の詩人たちによるバウムガルテン受容の研究を行っていることが判明した。今年度のドイツにおける調査目的が、当該の海外研究者と同じ主題をもつため最新の情報を得る必要が生じ、計画を2ヶ月繰り越して海外研究者を令和2年4月~5月に招聘することとした。しかしこれはコロナ禍の影響により実現できず、オンラインにて情報交換することで対応した。 研究代表者は共著書3冊を出版、9月に新プラトン主義協会にて、また11月に古典教父研究会にて発表を行った。また令和2年3月には新プラトン主義協会会誌に研究成果を発表した。その他『省察』訳註研究は予定よりも進捗し、また分担者の研究発表や成果も数多くあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画については、ドイツでの資料調査目的を申請していたが、研究が始まった初年度の11月の時点にて、資料調査の目的内容に相当する海外研究者の最新の研究が判明し、その結果、ほぼ同じ研究目的をもつ分担者による海外調査を見直すこととし、2ヶ月の計画延長によって当該の海外研究者の招聘を計画した。これはコロナ禍の影響により実現できなかったが、可能な限り海外研究者とオンラインで情報やデータのやりとりをすることで、本研究に対しては支障がでない程度の研究水準を維持することができた。海外調査を見直した分、オンラインでの訳註研究の機会が増え、本研究のうちチームCを中心とした研究は大幅に進捗した。 初年度の計画を2ヶ月延長した令和2年5月までの研究成果については、研究代表者が予定よりも多くの研究発表の機会を得たのみならず論文成果も発表できたこと、さらに研究代表者による研究成果(共著)も令和2年3月に3冊公開できたことにより、研究においてはかなりの進捗があったと評価できる。海外調査は今後もコロナ禍の影響によりほぼ不可能と見込まれるが、オンラインによるコミュニケーションの利点を積極的に活かし促進させたこと、また流通業界の維持・促進により文献の調達に支障がなかったことから、むしろ研究上の協議や相互理解が進み、データや情報も予想以上に得られ、その結果、本研究は順調に進展していると評価するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画については、令和2年5月の時点における計画に沿って、個別研究、チーム別研究、全体研究集会を実施する。その方法は、コロナ禍の中、多くの学会研究会が採るようにオンラインによる研究体制を整えることとする。研究代表者は遠隔会議に対応してズームなどのIDを取得し、分担者とは綿密な連絡態勢と、適確な研究協議体制を整えてゆく。研究計画にて見込んでいた交通費及び宿泊費等も、その分をオンライン通信環境の整備や文献収集に回すことで、本研究の研究集会環境をスムースにすると共に、必要な情報やデータ以上の資料を収集し、これらによって当初の計画以上の成果を得るよう努力する。研究2年目は、チーム研究に沿って個人研究発表とゲスト講演を予定しているが、オンライン体制であれば、参加しやすい環境も生まれ、またオンライン研究会を公開した場合の公共的利益なども大きいので、これを検討し促進させる。 なお、2年目に向け、分担者のうちチームDの田中均氏は本務先にて多忙なため分担者から外れるが、この補充の機会を利用して、申請時よりもチーム研究の専門性を強化する補充及び増員を計画した。研究協力者を可能な限り分担者に変更し、新規分担者も入るなどして、チームDに2名、チームCに1名の分担者を新たに割り当てることとした。これらの対応によって、本研究の目的は申請時よりも高いレベルで達成される見通しがついたと考えられる。
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