研究課題
黄檗様彫刻の変遷と受容について、萬福寺・范道生作十八羅漢像、福岡・福厳寺康祐作四天王像・韋駄天像、群馬・寶林寺伝康伝作諸像を対象として調査研究を行った。萬福寺十八羅漢像の構造については、透過X線撮影調査・樹種同定調査により、クスノキを使用し内刳りを施さない一木造であることが判明した。また加飾法については、衣部分が金の光沢が認められる箇所が多いのに対し、肉身部は像によって赤みが強い像や黒みが強い像など表面の状態に色調の違いが認められ、ポータブル蛍光X線分析計、デジタルマイクロスコープによる観察により、金箔層の下には鉛丹層があることが明らかとなった。さらに衣の表面に文様が描かれている場合に鉛を検出する例が多く、 文様には鉛白が使用された可能性が高い。それに対して福厳寺諸像では、良質なヒノキ材による内刳りを施した寄木造で、加飾法については金箔貼りの下塗りに酸化鉄を含む赤色顔料のみが検出された。寶林寺諸像も同じく良質なヒノキ材による内刳りを施した寄木造で、寶林寺諸像においても、鉛が顕著に検出された箇所は限られており、特に下塗りに使用した顔料に違いが認められた。さらに福厳寺四天王像・韋駄天像と寶林寺韋駄天像の構造は、共に左右二材の間に前面材、股下材、後面材を寄せ、両側面材と背面材を寄せる変則的な箱組み構造で、さらに他像には見られない甲冑部位に数珠玉を埋め込んで装飾する特殊技法も共通しており、康祐や康倫が採用しなかった構造や装飾技法からみて萬福寺に康祐と共に出入りした忠円、友山、香甫のいずれかによる造像である可能性も考えられた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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関西大学東西学術研究所紀要
巻: 55 ページ: 37-54