研究課題/領域番号 |
19H01278
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
卯城 祐司 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60271722)
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研究分担者 |
名畑目 真吾 筑波大学, 人間系, 助教 (60756146)
細田 雅也 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00825490)
土方 裕子 筑波大学, 人文社会系, 助教 (10548390)
森 好紳 白鴎大学, 教育学部, 准教授 (10824170)
長谷川 佑介 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (40758538)
木村 雪乃 獨協大学, 法学部, 専任講師 (40779857)
濱田 彰 明海大学, 外国語学部, 講師 (50779626)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 英語教育 / リーディング / 視線計測 / 文章理解 / 状況モデル / 心理言語学 |
研究実績の概要 |
本研究は,英語学習者が文章理解の一貫性を維持するメカニズムを,物語文読解における5つの状況的次元(同一性・意図性・因果性・時間性・空間性)の観点から解明することを目的とした。令和2年度は,(1)一貫性の維持が比較的容易とされる状況的次元(意図性など)を対象に,一貫性を維持する情報間の距離を長くした際の文章の理解を検証した。また,(2)一貫性の維持に困難が伴うとされる状況的次元(空間性など)を対象に,タスク・質問教示が一貫性の維持を促進するかを,読解中の発話プロトコルの分析から検証した。なお,新型コロナウイルス感染症の影響から,一部実験手法を変更した。 1つ目の研究では,同一性・因果性・意図性の各状況的次元を中心に記述した文章を用いて検証を行った。これらの文章には,前半の情報(先行情報)と後半の情報(目標文)が1文(局所条件)あるいは4文(大局条件)離れて記載されており,協力者が目標文に遭遇した際の先行情報への読み戻りを計測した。目標文と先行情報に矛盾がある文章と,矛盾がない統制条件の文章間で比較を行ったところ,意図性・同一性の次元では,局所あるいは大局条件で一貫性が維持されていたのに対し,因果性のテキストでは,一貫性の維持が安定して行われない可能性が示唆された。以上の結果から,英文読解における局所・大局的一貫性の維持の困難度が,一貫性を維持する次元によって異なる可能性が示唆された。 2つ目の研究では,因果性・時間性・空間性の次元について,文章読解前に因果質問を与えたり(質問教示),読解中に情景をイメージさせる教示(タスク教示)を与えたりすることが,通常の読解と比べて,読み手の一貫性維持を促すかを検証した。読解中に考えていることを協力者に発話してもらう,思考発話法を用いて分析を行なった結果,タスク・質問教示によって学習者が読解中の処理を柔軟に変えている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に実施した視線計測実験データを解析し,同一性・因果性・意図性における離れた文間の大局的一貫性の維持プロセスを明らかにすることができた。研究の成果は,国際学会にて発表し,学術論文として採択を得ている。さらに,これまでの知見から,一貫性の維持が難しいあるいは一貫性の維持が安定しない次元に対する教育的介入として,タスク・質問教示の効果を検証する実証実験を2つ実施することができた。以上の理由から,本研究は現在までに概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は,離れた文間の一貫性の維持に対して,学習者が困難を抱える次元があることが観察された。また,読みを方向づけるタスク・質問教示が,状況的次元の一貫性の維持や,読解処理に影響を与える可能性が示された。今後の研究では,タスク・質問教示の効果を,より客観的かつ詳細に捉えることを可能にする視線計測の手法を用いて検証することを目指す。さらに,学習者の一貫性維持に影響を与える個人差要因を焦点とした研究を行う予定である。
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