本研究課題は、様々な英語学習経験を持つ日本人小学生や大学生を研究対象として、脳機能・言語能力・一般認知能力に関するデータを取得し、早期英語学習の性質の理解を目指しながら、この研究分野における研究拠点の形成を試みている。2021年度は、コロナ禍の2年目であり、1年目同様、研究室に被験者を呼ぶことが困難なだけでなく、感染状況によってはラボ関係者が出勤することも無理な時期があった。あまり効率的に研究が進められたとは言い難いが、制限のある中でも実施できる内容に注力し、研究拠点の形成にむけて前進した点は意義がある。年度途中、計測データに原因不明のノイズがあることが大きな問題となり、実験計画を後ろ倒しするとともに、科研費の一部を次年度に繰り越すことになったが、そこで様々な角度から環境を調べたことで、計測にとってクリーンな実験環境を手に入れることが出来た。被験者を招いての実験が止まっている間は、例えば、将来に向けて2つ目の脳波実験パラダイムを構築するなど、他の何かを前倒しで進めるなど工夫をした。日本人の子どもが超長時間の英語学習を行っている個別事例について、当事者の保護者などからオンラインを通して実態の調査を行ったり、既に収集してあったデータの分析を進めるなどした。成功している事例については、ある程度、共通項が見えてきたことで、子どもの第二言語習得の性質の理解が深まるとともに、小学校英語教育や早期英語学習に対して現実に即した示唆を与えられる見通しが出てきた。しかし、まだ研究が遅れており不十分な面が多いことは否めないので、今後はデータ取得のスピードアップを目指し、より強固な証拠を集めていきたい。
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