研究課題/領域番号 |
19H01299
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
四日市 康博 立教大学, 文学部, 准教授 (40404082)
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研究分担者 |
向 正樹 同志社大学, グローバル地域文化学部, 准教授 (10551939)
麻生 伸一 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 准教授 (30714729)
菊池 誠一 沖縄県立芸術大学, 芸術文化研究所, 研究員 (40327953)
森 達也 沖縄県立芸術大学, 美術工芸学部, 教授 (70572402)
片桐 千亜紀 九州大学, 比較社会文化研究院, 共同研究者 (70804730)
小澤 実 立教大学, 文学部, 教授 (90467259)
石黒 ひさ子 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (30445861)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 港市国家 / 港市 / 陶磁器 / 海域史 / 東西交流 / 商人 / 琉球 / 水中考古 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、本研究では、海域アジア世界の歴史的展開を考えるうえでインド洋・地中海海域世界までを視野に入れ、「港市国家」を多角的に再検討するという目的から、琉球史・東アジア史・東南アジア史・イスラーム史・ヨーロッパ史の各観点から港市国家に関する先行研究状況の情報・研究・史料を収集することから共同研究をおこない、それぞれ相当量の先行研究成果を整理した。また、中国史を専門とする新規分担者が加入したことにより、中国における「港市」と社会・流通の関係も視野に入れることができた。 コロナ禍において実際に大人数が集まって研究会・共同調査をおこなうことが難しかったため、オンラインで月に一度定例の研究会を開催し、それぞれの専門の立場から港市国家や陶磁器流通などに関する報告をおこない、意見交換をおこなうことで、現地調査に先立つ基礎研究の土台形成をはかった。水中調査は引き続き2022年度も継続する予定である。 5月28日から31日にかけては、琉球王国の港市調査の一環として、石垣島沖で石垣島の港湾・沈船遺跡に関する水中調査(潜水調査)を実施した。なお、本来は代表者である四日市も参加予定であったが、コロナ禍下であったため、九州・沖縄地方の分担メンバーのみで調査をおこなった。 一方で、2021年度に延期されていた海外港市調査のインドネシアのスマトラ島バンダアチェ、ジャンビの調査とイランのペルシャ湾ホルムズ王国遺跡調査はコロナ禍の蔓延状況を考慮して2022年度に再延期された。 このほか、中世博多遺跡、日中の鉄製品出土遺跡、琉球王朝などに関するシンポジウムや研究会、ワークショップに各分担者や代表者が参加し、内外の研究者と意見交換をおこなった。3月26日には、2021年度の総括ワークショップ「港市国家遺跡の比較研究に向けて」をクローズドで開催し、成果のとりまとめと今後の研究方針の確認をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
関連史資料の収集・整理については、東アジア・東南アジア・インド洋・ペルシャ湾・地中海の各地域ごとに各分担者メンバーが各自の専門に沿って進めており、代表者が共同作業アプリSLACKにおいて各分野ごとの共同ワークスペースと各種情報アーカイブのチャンネルを設定し、そこにデータベースとして情報をストックしている。この体制は引き続き、2022年度も継続してゆく。 主要な研究対象地域のひとつである沖縄(グスク時代および琉球王国)に関しては、コロナ禍が収束していないため、十分な現地調査が実施できておらず、主に文献研究や資料研究の面から共同研究を進めている。那覇港に関しては近世以降に関してはある程度の歴史的な空間構造を把握できているが、グスク時代以前の状況はなお不明瞭な点が多く、近世史との対話や現地調査を通じて、引き続き調査を継続してゆかなければならない。沖縄では離島(石垣島)において港市に関する潜水調査や別の水中遺跡の予備調査もおこなっており、来年度にかけて調査の成果をまとめると共に、前近代の沈没船に関わる調査を来年度実施するため、その予備調査・基礎研究を進めている。 また、海外の港市、特にペルシャ湾のホルムズ王国やスマトラ島のジャンビ、ラムリー王国(バンダアチェ)、シンガポールのシンガプラ王国に関しては比較研究の前提となる現地調査が実施できていない。そのため、引き続き、現地調査の準備を進めると共に、万一、このままコロナ禍が収まらず現地調査が実施できなかった時のために、国内外における代替調査の準備も並行して進めてゆく。特に、国内の奄美、薩摩、博多、五島、兵庫、北陸などにおける湊や津の文献調査・資料(陶磁器)調査と現地調査を比較の観点からおこなう予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、共同研究内でデータベースによる情報・知識の共有に役立てている共同作業アプリのSlackの活用を推進し、分担メンバーの情報・知識の共有を強化する。 同時に、国内外における現地調査を実施するための準備を進め、イラン・ペルシャ湾での調査に関しては、万一コロナ禍で分担メンバーの渡航が難しい場合、代表者および少人数での調査をおこなう。インドネシア/スマトラ島に関しては、渡航が難しい場合、類似した港市遺跡が存在するタイ、ヴェトナムにおける代替調査を検討し、その渡航も難しい場合は、奄美諸島、五島列島、瀬戸内海での代替調査を実施して、比較検討をおこなう。 なお、イランやインドネシアでの調査が縮小・中止される可能性を考慮して、沖縄における琉球王国の港市調査の比重を大きくし、同地域における水中考古調査や近世琉球と中世琉球の港市に関する比較史的研究を進めてゆきたい。コロナ禍の状況にもよるが、沖縄で年に数回、対面での共同研究をおこなう。 2022年度は最終年度であるため、総括ワークショップを開催し、各メンバーの研究成果を発表すると共に、その相互検討をおこなって総括をおこなう。
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