研究課題
台湾、パラオ・サイパン、韓国、日本各地、サハリン、中国の大日本帝国期の建築物のライフヒストリー(歴史的変遷と現在の活用状況)について補助調査と公開研究会を行った。台湾については、神を日本から勧請し、神社公園とした桃園市の忠烈祠について調査し、戦後の政治的変遷の中での扱いに違いを明らかにした。また、西洋文明を取り入れつつ国家神道を通じた植民地経営を行なった日本と、キリスト教を通じた欧米の植民地主義との関係が現代にどう影響しているのか、台湾に残る帝国期以前のキリスト教建築を調査した。韓国では、植民地期建築物を活用した観光が行われている群山、九龍浦で調査し、新たな観光参入業者の経営戦略にレトロブームやロケ地観光が反映されていることを明らかにし、大日本帝国の建築物である歴史が現地の観光戦略に依存する形で決定される過程を明らかにした。旧南洋群島のサイパンとパラオについては、南洋庁医院の建築物建造の歴史的背景および、戦後から現在に至るまでの活用について整理し、植民地遺産の利活用と植民地統治の記憶の関係について検討した。コロナ流行期とロシア・ウクライナ戦争勃発のため入国困難なサハリンについては、樺太時代の日本遺産が日本人観光客の激減を受けて、その戦略が変化していることを明らかにした。また、20世紀初頭までに日本に建てられたロシアの教会(函館市、京都市、豊橋市)の建築物を対象に日本人信者、ロシア人移住者、地域住民などの認識の異同を明らかにした。中国国内では、省レベルと国家レベルでは大日本帝国の建築物の遺産認定が異なること、さらに他の歴史的経緯を持つ遺産と比べ遅くに認定される点に注目し、その要因を探った。日本国内については、震災関係の記憶の継承と比較するなかで、三池炭鉱関連の産業遺産保存・活用および世界遺産登録について負の記憶を持つ産業の跡地や記憶が遺産化する過程を検討した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Sakhalin Museum
巻: 42-1 ページ: 63-77
淡江日本論叢
巻: 47 ページ: 56-74
https://www.pu-hiroshima.ac.jp/p/kamizuru/studyroom.html