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2019 年度 実績報告書

萌芽期における日本の国際私法ー穂積文書の検討を中心として

研究課題

研究課題/領域番号 19H01416
研究機関一橋大学

研究代表者

竹下 啓介  一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (60313053)

研究分担者 櫻田 嘉章  甲南大学, 法学(政治学)研究科(研究院), みなし専任教員 (10109407)
道垣内 正人  早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (70114577)
北澤 安紀  慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (70286615)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード国際私法
研究実績の概要

令和元年度(平成31年度)においては、手書きで書かれた穂積文書について活字化(翻刻)する作業を行い、穂積文書の全体像について検討を行った。
具体的な研究成果としては、穂積文書として残されていた手書きの文書が、基本的に法典調査会における法例に関する議事の準備として作成された文書であったことを確認するとともに、法典調査会における議論の前提としてどのような検討がされていたのかについて、一定程度、確認をすることができた。穂積文書には、法典調査会に提出される法例草案を起草するに至るまでの検討状況に関する情報、特に、参照した外国法制・外国研究者の文献に関する記述が残されていたため、条文毎にどのような検討を経て起草されたかについての分析を行うことができた。例えば、法典調査会に提出された草案27条では、公序則について「外国法ニ依ルヘキ場合ニ於テ其規定カ公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スルトキ」とされていたものの、穂積文書における起草過程の当初においては「外国法ニ依ルヘキ事項ヲ定メタル規定ノ適用カ公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スルトキ」とされており、現在の日本の国際私法学における一般的な考え方に整合的な文言(実際に、平成元年の法例改正において、穂積文書に残された当初案の文言に近い「外国法ニ依ルヘキ場合ニ於テ其規定ノ適用カ」という文言に修正されている)となっていたことが明らかとなった。また、法典調査会の議事速記録において条文毎に付された外国法制・外国研究者に関する情報の意義、例えば、「甲」「乙」といった記号で分類がされていた趣旨が何であったかといった点について、穂積文書の記載から明らかにすることができた。
以上のように、令和元年度においては、穂積文書の記載の全体像から萌芽期の日本の国際私法、特に、明治31年法例立法に関する経緯について、検討・分析をすることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

令和元年度(平成31年度)に実施することを想定していた手書きで書かれた穂積文書の翻刻作業については、研究期間の延長申請により、ほぼ予定どおり、実施することができた。しかし、コロナ禍の影響により、令和元年度末の期間に十分な調査・検討をすることができなかったため、穂積文書の内容についての分析や、萌芽期の日本の国際私法に関する検討課題の分析・研究については、遅れている。そのため、全体的な評価としては、研究はやや遅れている。
特に、海外調査をすることができず(研究期間の延長によっても、出張を行うことができなかった)、海外調査成果に基づく研究を実施することはできなかった。また、日本国内における調査についても、穂積文書の翻刻作業が一定程度進んだ段階では、研究代表者・研究分担者のそれぞれの所属大学における調査を中心とせざるを得なかった。このように、必ずしも十分な調査をすることができなかったため、研究はやや遅れている状況である。

今後の研究の推進方策

コロナ禍の影響で、海外調査がどの段階で実施することができるようになるか、必ずしも明らかでないが、日本国内を中心として可能な範囲で文献調査・分析を行うことで、着実に一定の研究成果を出すことができるように、研究を推進する予定である。
具体的には、繰り越した令和2年度補助事業の研究としては、最低限の目標として、翻刻作業がほぼ完了した穂積文書についての分析結果を取りまとめて、書籍として穂積文書及びその解説を出版することができるように準備することまでは、研究を推進する予定である。加えて、ハーグ国際私法会議に加盟する際の外国史料についても、翻刻を実施することで、萌芽期の日本の国際私法を解明するにあたって重要であると考えられる史料を、研究に活用可能なものとする予定である。
また、繰り越した令和3年度補助事業及び令和4年度補助事業の研究についても、令和2年度の研究成果を前提として、更に理論的な分析・議論を行うことで、可能な限り、研究論文を執筆し、公表する予定である。

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公開日: 2022-12-28  

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