研究課題
本研究における理論的・方法論的・実証的研究の三つのレベルを統合しながら、公立小学校における教師たちによる先端的な校内研究の試みを取り上げ、データを収集し、その分析を行うことによって、教師の「拡張的学習」を促進し、「変革的エージェンシー」を形成する新たな校内研究のあり方を明らかにした。理論のレベルと実践のレベルの間をブリッジする方法論のレベルでは、「文化・歴史的活動理論」において「形成的介入」と呼ばれる方法論的枠組みにもとづき、学校改革に関する教育学研究のパラダイム転換を検討した。「形成的介入」を新たな方法論として学校現場の教師と研究者が協力して進める校内研究の試みでは、従来の教育学研究において支配的な、教育実践に対するハイアラーキカルな関係や上からのパターナリズム(「善意の改革」)にもとづくリニアな介入観が根本から問い直されることになる。つまり、「形成的介入」は、そうしたリニアな介入に取って代われるような教育学の新たな研究方法論となりうるものなのである。本研究では、そのような「形成的介入」を方法論としながら、教師たち自身が自分たちの学校づくりに対するイニシアティブを発揮していくこと、すなわち自らの学校の「活動システム」の新しい集団的なデザインと変革を生み出していく「拡張的学習」のプロセスを呼び起こし、促進・支援していくような新たな校内研究をめざす試みに焦点化して、具体的なデータの分析を進めていった。そうした校内研究において教師たちは、「まだない」ような未来の「活動システム」を想像し構想することによって、学校の可能な未来づくりへと向かっていく「拡張的学習」を生み出していった。また、同時に、自分たちが学校の「活動システム」全体の協働的な創り手になっていくという「変革的エージェンシー」を高め、拡張していった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proceedings of the 16th International Conference of the Learning Sciences
巻: ICLS 2022 ページ: 1093-1096
関西大学『文学論集』
巻: 第71巻第3号 ページ: 71-94
10.32286/00025941
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