研究課題/領域番号 |
19H01693
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
鳥居 朋子 立命館大学, 教育開発推進機構, 教授 (10345861)
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研究分担者 |
岡田 有司 東京都立大学, 大学教育センター, 准教授 (10584071)
高橋 哲也 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 教授 (20212011)
林 透 金沢大学, 教学マネジメントセンター, 教授 (20582951)
村上 正行 大阪大学, 全学教育推進機構, 教授 (30351258)
山田 剛史 関西大学, 教育推進部, 教授 (40379029)
大山 牧子 神戸大学, 大学教育研究センター, 准教授 (70748730)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 教育プログラムの評価と改善 / 質保証 / 教学マネジメント / 好循環システム / ティップス / IR |
研究実績の概要 |
本研究は、大学の質保証を支える学部等における教育プログラムの評価と改善の好循環を促すシステムのあり方を解明することを目的とする。研究期間(4年間)の第3年度にあたる2021年度には、引き続きCOVID-19による行動制限が課されるなか、以下の通り研究を進めた。 1.日本におけるオンライン学会への参加・発表を実施し、教育プログラムの評価と改善の好循環システムに関する情報収集や関係者との意見交換を行った。具体的には、大学教育学会第43回大会(6月)にて、学部における教育情報の活用及びIRの現状と課題について、全国調査と事例研究の分析を通じて得られた示唆を明らかにした。 2.日本の大学の全学部を対象に実施したウェブ・アンケートで回収したデータに基づき、学部系統別の観点から、教育プログラムの評価と改善の実態分析や主要な問題のさらなる特定を進めた。あわせて、学習成果測定や教育プログラムの評価を推進している大学へのヒアリング調査(オンライン)を行い、ケーススタディ等を通じて、好循環システムを形成する際に考慮すべき点やシステム構築上の要件等の抽出を進めた。具体的には、広島大学(7月)、静岡文化芸術大学(10月)、金城学院大学(11月)、山形大学(11月)、同志社女子(11月)、大正大学(11月)、沖縄県立芸術大学(1月)を対象に、いかに教育プログラムの評価および改善の循環が組織的に形成されているのかを明らかにした。3.国内研究会をオンライン(1月)で実施し、研究組織内で研究成果を共有しつつ、到達点および今後の課題に関する共通理解を形成した。なおかつ、最終研究成果物としての「大学の質保証のための教育プログラムの評価と改善の好循環ティップス(仮称)」の開発に向けた課題の整理及び検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
教育プログラムの評価および改善の好循環システムに関する国内外の動向や個別大学の取り組みの特質については、オンラインによるヒアリング調査で得られたデータや情報の分析を基に、大学教育学会第43回大会(6月オンライン)及び東京大学教育学研究科学校教育高度化・効果検証センター 研究セミナー(10月オンライン)において研究発表を行った。前者については、日本の大学の全ての学部(2,434学部)を対象に実施したウェブ・アンケートによって得られた251学部のデータに基づき、IR機能の活用や学部系統別の観点から、日本の大学の学部における教育情報の活用の現状と課題に関する分析結果を発表した。特に、医療系、理工系、人文系、社会系の6学部を取り上げ、優れた取り組みの特質を明らかにした。なおかつ、研究成果の一部を共著論文(鳥居朋子・岡田有司・山田剛史・林透・高橋哲也・村上正行・串本剛・大山牧子(2021)「学部における教育情報の活用およびIRの現状と課題-全国調査と事例研究の分析を通して- 」『大学教育学会誌』43(2)、pp. 89-93)や鳥居朋子(2021)『大学のIRと学習・教育改革の諸相:変わりゆく大学の経験から学ぶ』の単著等にまとめ発表した。COVID-19による厳しい行動制限の下、とくに海外大学等への訪問調査や国内大学へのフォローアップ調査にかかわる当初計画を中止・延期せざるを得なかったため、現在までの進捗状況については、やや遅れていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は2021年度の実績に立脚し、大学の質保証を支える学部等における教育プログラムの評価と改善の好循環を促すシステムの解明に向けて、日本の大学を中心に訪問調査及びフォローアップ調査を実施する。また、海外の大学の訪問調査を基に、優れた循環システムの要件を抽出する。さらに、2019年度に実施した日本の大学の全ての学部を対象にしたウェブ・アンケートで得たデータをもとに、大学の特徴、学部の特徴に関する要因に注目しつつ、教育プログラムの評価と改善に関わる最新の実態分析や主要な問題のさらなる特定を行う。 具体的には、学習成果測定や教育プログラムの評価を推進している大学(これまで検討されていない芸術系の学部を含めて複数選定)や量的調査の結果を基に選定された大学への訪問調査を実施する。各大学の文脈に即した質的調査によって、 専門分野の違いに着目しながら教育プログラムの評価と改善の循環に関するグッドプラクティス及び課題を明らかにする。さらに、大学の教育プログラムの評価と改善の好循環システムの先進事例を検討するため、米国の大学(例:アメリカン大学等)への訪問調査を行い、優れた循環システムの要件を抽出する。ただし、COVID-19の感染拡大の情勢や各国・地域における行動制限の状況を考慮しつつ、安全を期して実施する。あわせて、オンラインを活用したヒアリング調査の方法も追求する。 以上の調査結果の分析と並行して、日本の大学において教育プログラムの評価と改善の好循環システムを形成する際に考慮すべき点やシステム構築上の要件等の抽出・整理を進める。その上で、これまでの成果を大学教育学会等で発表するとともに、研究成果やグッドプラクティスを共有するためのティップスの開発については、米国で構築されている成果に基づくプログラム・レビューのモデルを枠組みとして参照し、指針案のさらなる検討を進める。
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