今年(2023年)度の研究では、聴覚障害者の視覚的非言語性認知課題の処理方略の特徴を、聴覚障害教育現場における視覚教材の活用と視覚教材を用いる教師の認識の側面から、検討した。 対象者は、特別支援学校(聴覚障害)23校の幼稚部から高等部専攻科に在籍する教員であった。対象教員には、視覚教材(23種類)の使用頻度と提示方法(10項目)、及び聴覚障害者の視覚スキルと視覚教材関連文献の活用に関する認識について、回答を求めた。 研究の結果、特別支援学校(聴覚障害)23校の聾学校指導経験9年程度の307名(有効データ数は284人分)の教員からの回答が収集された。聾学校全体で使用頻度の高い視覚教材トップ5は、「自作プリント・スライド」、「写真・写真カード」、「動画・DVD教材」、「実物・模型」、「教科書に関する教材」の順であったが、また、聾学校での学部が上がるにつれ、「動画・DVD教材」や「教科書に関する教材」が多く使われる変化が示された。また、聾学校全体で使用頻度の高い提示方法トップ3は、「PC外部ディプレー、スクリーンに表示」、「電子黒板に表示」、「プリント形式で幼児児童生徒に配布」であり、学年が上がるにつれ、「黒板・ホワイトボードに記入」や「各のタブレット端末に提示」の頻度が高まっていた。聴覚障害者の視覚的スキルに関する教員の認識は、健聴者の視覚的スキルとほとんど変わらないという認識が強いこと、一方、視覚教材は聴覚障害者の理解しやすさや学習に大きな効果があるとの認識が強く示された。
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