研究分担者 |
池田 昌司 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00731556)
金 鋼 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20442527)
宮崎 州正 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (40449913)
小渕 智之 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (40588448)
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研究実績の概要 |
[過冷却ヤーン・テラーアイス状態] 我々は最近、Y2Mo2O7パイロクロア型酸化物におけるスピングラス転移に関して、スピン自由度の他に、実験的に指摘されていた格子のひずみに注目し、それを動的自由度として取り込んだ有効模型を提案していた。(Mitsumoto, Hotta, Yoshino, 2020) そしてこの有効模型の大規模数値シミュレーションを行い、スピンと格子の同時ガラス転移を 強く示唆する結果を得ていた。我々は最近、この有効模型の基礎づけを行うために、格子ひずみに関する微視的な理論的、数値的研究を進めた。(Mitsumoto, Hotta, Yoshino, arXiv:2202.05513) まず、Moイオンの変位によって、その結晶場の対称性が落ち、その軌道縮退が解ける機構を明らかにした。これに加え変位に伴う弾性エネルギーの増大を考察した。これらを組み合わせ、この系におけるヤーンテラー効果を記述する微視的ハミルトニアンを導出した。この模型の詳細な理論・数値解析を行なった結果、系全体を一様に歪ませる1次転移が低温に存在することを見出した。ところが、液体状態が、高温だけでなく、準安定状態として低温まできわめて安定に存在できることを見出した。この液体状態における歪みのパターンは、パイロクロア格子の上でいわゆるアイスルールを90%程度満たしている。この過冷却液体状態が低温まで安定に存在することによって、さらに低温でスピン自由度が絡んだスピン・格子同時ガラス転移が実現する舞台が形成されていると考えられる。
[複合p体スピン模型のレプリカ理論・動的平均場理論解析] 並進・回転自由度を併せ持つ楕円体コロイドなどを念頭に、複合自由度をもつ系におけるガラス・ジャミング転移の数理構造を考察するために複合p体スピン模型を考案し、レプリカ理論・動的平均場理論による解析を進めた。
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