研究課題/領域番号 |
19H01908
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高橋 弘充 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (10536775)
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研究分担者 |
林田 清 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (30222227) [辞退]
北口 貴雄 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (30620679)
川島 朋尚 東京大学, 宇宙線研究所, 特任研究員 (90750464)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 偏光観測 / 硬X線 / 気球実験 / ブラックホール |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日米瑞の国際共同研究によって硬X線偏光計XL-Calibur気球を1週間(以上)フライトさせ、超巨大ブラックホール(太陽質量の10の6-10乗倍)が周囲に及ぼす相対論的な効果を偏光観測によって特定することである。とくに一般相対論的な効果は、ブラックホールの自転(スピン)に起因し、宇宙物理学や天文学にとって重要な観測対象であり、スピンが高速なのかどうか30年以上にわたって論争が続いている。本研究では、XL-Calibur気球に世界最大の望遠鏡と改良した偏光計を搭載することで感度を1桁以上向上させ、遠方銀河に存在する超巨大ブラックホール(活動銀河核)の偏光観測を目指す。その実現に向け、望遠鏡を気球に搭載できるように改修し、また偏光計のバックグラウンドを低減する。 これまでに硬X線望遠鏡の改修を完了し、3回にわたってSPring-8の30 keVシンクロトロン光を利用して支持構造の位置をμm単位で微調した。この結果、反射鏡の角度が整い、結像性能が最適となった。観測天体の仰角や上空での温度変化によって気球トラスが変形し、望遠鏡と偏光計の相対位置が動く可能性がある。この動きをモニタする可視光カメラが真空で動作することを確認した。気球が着地する際に望遠鏡を保護するためのプロテクタも製作した。偏光計については、米国では主検出部のCZT半導体検出器、スウェーデンではアクティブシールド部のBGOシンチレータ検出器が製作された。XL-Calibur気球と同時期に打ち上げが予定され軟X線で偏光観測を実施するIXPE衛星と、同時観測を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響で、気球の打ち上げは当初の2021年から2022年へと1年遅れとなったが、打ち上げ機会はキャンセルされることなく確保されている。また搭載する装置開発については、日本が主担当する硬X線望遠鏡について準備が順調である。偏光計についても、米国とスウェーデンで製作が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
硬X線望遠鏡は2021年6月にSPring-8で較正実験することにより、焦点位置と有効面積を実測する。ヒーターなどの熱計装を付け、フライト準備を完了させる。2021年度は、気球に搭載する全機器(一部は模擬)を米国に集めて組み上げ、全体を通した動作試験を実施する。日本からも最少人数が現地に渡航して試験に参加する。これにより、気球全体でのフライト準備も完了し、2022年5-7月のスウェーデンからの放球に臨む。
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