研究課題
本研究の目的は、日米瑞の国際共同研究によって硬X線偏光計XL-Calibur気球を1週間(以上)フライトさせ、超巨大ブラックホール(太陽質量の10の6-10乗倍)が周囲に及ぼす相対論的な効果を偏光観測によって特定することである。とくに一般相対論的な効果は、ブラックホールの自転(スピン)に起因し、宇宙物理学や天文学にとって重要な観測対象であり、スピンが高速なのかどうか30年以上にわたって論争が続いている。本研究では、XL-Calibur気球に世界最大の望遠鏡と改良した偏光計を搭載することで感度を1桁以上向上させ、遠方銀河に存在する超巨大ブラックホール(活動銀河核)の偏光観測を目指した。その実現に向け、望遠鏡を気球に搭載できるように改修し、また偏光計のバックグラウンドを低減した。望遠鏡については、SPring-8の20-70 keVシンクロトロン光を利用して、エネルギー毎の結像性能・有効面積を較正した。望遠鏡を20℃に保つためのヒーターと温度計も付けた。可視光の平行光を利用することで、天体の観測方向と偏光計の方向をモニターする2台の可視光カメラと硬X線望遠鏡の光軸関係も測定した。これにより、望遠鏡のフライト準備が完了した。偏光計についても、0.8mm厚に薄くしたCZT半導体検出器(主検出部)と、阻止能の高いBGOシンチレータ(アクティブシールド部)を組み上げが米国において実施された。2022年5-7月に気球打ち上げ場のスウェーデンEsrange実験場に滞在し、気球ゴンドラに望遠鏡を設置し、カナダまでの7日間のフライトを実施した。気球高度を保つバラスト運用に不具合があったため、天体信号を検出することはできなかったが、各機器の上空40kmでの動作および性能は想定通りであることが実証された。次回は2024年に再度スウェーデンからのフライトを計画している。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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