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前年度までにイオン注入のみで生体活性を与えることが不可能であることが判明したため，リン酸や水酸化ナトリウムを用いて処理することにより生体活性を付与する手法を開発した．ジルコニア材料（部分安定化ジルコニア（3Y-TZP），強化ジルコニア（ATZ））を95 ℃の水酸化ナトリウムやリン酸溶液に7日間浸漬し，その後，擬似体液に浸漬することで骨類似アパタイトの形成を調査した．その結果，アパタイト形成量は水酸化ナトリウムよりもリン酸処理の方が高く，ATZよりも3Y-TZPの方が多くなった．特にリン酸処理した3Y-TZPでは，表面のほぼ全てがアパタイト層で被覆され，高いアパタイト形成能を示した．これらの材料では，生体埋入後に表面にアパタイトを形成することで生体骨と直接結合することが示唆される．さらに，アパタイト形成能は酸・アルカリ処理に伴い表面エネルギーが低下し，接触角が小さくなったことが影響している可能性を示した．
次に力学的特性を調査するために二軸曲げ試験とジルコニア材料の劣化の指標となる単斜晶率の測定を行った．その結果，3Y-TZP，ATZ材料は水酸化ナトリウムやリン酸で処理後も二軸曲げ強さは低下しなかった．さらに，アパタイト形成後や生体埋入後約30年の長期間の強度を予測するオートクレーブ処理後も二軸曲げ強さが低下することはなかった．しかし，処理に伴い約30%の正方晶ジルコニアが単斜晶に変態した．一方で，イオン注入したジルコニア材料をリン酸処理した場合，イオン注入無のものと同様の生体活性が得られ，同時にイオン注入量の増加とともに，単斜晶への変態が抑制される傾向が観察された．本手法は生体活性を付与しつつ，生体内での長期使用においても劣化の少ない処理法として期待される．
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