本研究課題ではゲノム編集技術であるCRISPR-Cas9について、特に安全性が重要になる応用面での懸念事項であるオフターゲット作用を抑制するためにDNA切断作用とDNA修復機構がどのように関連してオフターゲット作用が現れるか、について独自に見出したAnti-CRISPR+Cdt1の融合タンパク質の作用によるオフターゲット作用抑制をヒントに作用機序を解明し、普遍的原理を探求することを目的としている。今年度の研究実施内容とその成果としては以下のとおりである。1.SpCas9に対するAcrIIA4以外の作用解析、ではAcrIIA5がAcrIIA4と同等以上の阻害活性を有することが明らかになり、オフターゲット作用の抑制効果を検討した結果、AcrIIA4よりもオフターゲット作用抑制効果が高いことが明らかになったが、相同組み換え効率では劣ることが示された。2.Cas9誘導体に対するAnti-CRISPR+Cdt1による活性制御の拡張、ではdCas9を利用した転写活性化因子の作用を蛍光観察する系で細胞内でのAnti-CRISPRとCas9の相互作用解析が可能であることを示した。3.Anti-CRISPRタンパク質の候補遺伝子の探索、についてはアデノ随伴ウイルスベクターに搭載可能な小型のSaCas9についてゲノム編集効率を解析し、AcrIIA1~A6の6種類を用いてオフターゲット作用抑制効果を解析した。4.ゲノムワイド解析を利用した多様な標的遺伝子での効果検証、ではAAVS1以外の標的でのオフターゲット作用の解析を行った。5.Cdt1変異体を利用したより厳密な抑制系の構築、ではこれまでに利用していたCdt1(30-120)以外の変異体を利用した発現系を構築し、ゲノム編集効率に与える影響を解析した。
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