本研究課題では,酵素活性の網羅的解析(enzymomics)の概念に基づいて疾患と関わるタンパク質の機能異常を見出す基盤技術の確立を目指した研究をおこなった. Phos-tagによる固相抽出を利用して蛍光プローブをオンデマンド合成するsynthesis-based on affinity separationの仕組みを確立し,任意の蛍光プローブを95%以上の純度で簡便に得ることを可能とした(特許出願済,論文投稿済).これによって,100種類以上の蛍光プローブの合成をおこない,特に血液中の酵素活性の計測から,疾患と関わる活性異常を複数見出すことに成功し,酵素活性を網羅的に解析することによって疾患の診断に繋がる知見を得るactivity-based diagnosisの基盤構築を達成した. また,分子内環化反応を利用した新たな蛍光プローブ設計法や,酸化還元酵素の活性を広範に可視化する新規蛍光プローブの開発にも取り組み,これまでの蛍光プローブ設計原理では可視化することができなかった酵素群へと標的を拡充することに成功した.特にこれらの新規に評価が可能になった酵素群については,疾患との強い関わりが期待されるもののその理解が進んでいないものも多く含まれ,本研究プラットフォームを用いてこれらの酵素と疾患との関わりの理解が進み,創薬標的,バイオマーカーとして新規疾患治療,診断法の開発に繋がっていくことが強く期待される.
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