研究課題/領域番号 |
19H02880
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
魚住 信之 東北大学, 工学研究科, 教授 (40223515)
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研究分担者 |
石丸 泰寛 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80590207)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膜輸送体 / 脂質修飾 / 浸透圧 / 恒常性 |
研究実績の概要 |
環境の変化の代表的な乾燥・脱水・塩害などに応じた恒常性維持が植物には重要であり,生存に必須である.植物イオン輸送体はその応答機構分子として機能しているが,階層的な調節を受けている.このため,養分吸収,浸透圧調節,膜電位形成,細胞内酵素の活性化と不活化を行うことにより,細胞内を環境変化に関わらず恒常性を保ち,増殖や組織分化を適正に行うために優れた重要な役割を担っている.本研究では,これまで申請者が行ってきたイオン輸送体に関する結果に基づいて,未解明となっているイオン輸送体の機能と役割を担う調節系とその統御の機構の解明をはかることをめざしている.昨年度に機能未知のパルミトイル基転移酵素を酵母変異株に導入して,自己脂質修飾活性の検出をこころみた結果,いくつかのコンストラクトにおいて最適化を図る必要があり,条件検討を行った.これにより,検出できていなかったタンパク質について改善が見られた.一方,今回新たに検出を行ったタンパク質の中にも発現量が低い場合や修飾効率が低い場合があった.さらに,機能未知のシロイヌナズナ24種類のパルミトイル基転移酵素の機能活性について酵母変異株を用いるスクリーニングにより検出した.また,パルミトイル基転移酵素遺伝子変異株のホモ化をすすめた.さらに,CBL1,4,5,9がパルミトイル化修飾を受けると考えられていることから,今回はCIPK複合体の酵母発現を行い,脂質修飾による調節の解析にむけた測定の準備も並行してすすめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の測定で,シロイヌナズナの全部のパルミトイル化修飾酵素の酵素活性を実測することができた.これまでに酵素活性例は極めて少なく,今後の脂質修飾研究に寄与すると予想している.Cysに修飾を受ける残基と修飾されない残基の検出の順序を入れ替える検討を行った.また,還元剤の影響についても検討した.これらの探索により,より最適な検出条件を得ることができた.今回,ほぼすべての遺伝子産物において脂質修飾施が検出されたことから,機能を持った酵素遺伝子であることがわかり,自己パルミトイル化修飾を経て,目的タンパク質の就職を行う能力を確認した.また,パルミトイル化修飾酵素遺伝子変異株に関しては,世界の種子ストックセンターより取得した種子について,ホモ化をすすめている.また,酵母におけるCBL-CIPK複合体の発現を並行して行っている.次年度に検討する予定であるCPKリン酸化酵素に関してもプラスミド構築を終了し酵母発現を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に機能未知の20種類以上のパルミトイル基転移酵素を酵母変異株に導入して,自己脂質修飾活性の検出ができたことから,酵素活性を有する状態でパルミトイル基転移酵素活性の検出をはかる.標的としてリン酸化酵素CPKを選択して,イオンチャネルの階層的な調節に関する検討をすすめる.CPKに関しては酵母におけるタンパク質の検出が必要であるが,予備検討で発現を確認しており,パルミトイル基転移酵素の測定をすすめることができる.CPKの分子内には複数のCysがあり,パルミトイル基修飾を受ける残基を特定するためにSerに置換して残基を同定する.また,構築しているパルミトイル基転移酵素遺伝子変異株のホモ化した植物において,表現型を調べる.また,発現部位のデータベースを基に,CPKと共発現する可能性を検討する.CPKの植物における発現組織に一致するパルミトイル基転移酵素の発現組織を明らかにするためにプラスミド構築と植物の作成を行うとともに,これに並行して,植物のイオンチャネルの酵母における発現解析を行う.
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