研究課題/領域番号 |
19H03035
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
戸田 龍樹 創価大学, 理工学部, 教授 (10222150)
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研究分担者 |
岸 正敏 創価大学, 理工学部, 助教 (00824020)
平原 南萌 創価大学, 理工学部, 研究員 (80845404)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大量培養リアクター / かいあし類 / 高付加価値微細藻類 / 環境ストレス耐性 / DHA / EPA / カロテノイド系色素 |
研究実績の概要 |
本研究では、高い生残率・生産率を達成し、かつ豊富なEPA・DHA・カロテノイド系色素を含有する高付価価値なスーパーかいあし類の連続大量培養技術を確立する。1-2年次には、微細藻類種とかいあし類種の最適な組み合わせを、ターゲットとなる高付加価値物質(EPA・DHA・カロテノイド系色素)の含量、カイアシ類の卵生産数・生存率を基準に決定する (研究課題①)。 当該年度は、対象とするAcartia steueriを相模湾真鶴港で採集し、珪藻Thalassiossira weissflogii、珪藻Chaetoceros gracilis、緑藻Dunaliela tertiolectaを餌料藻類として6日間の培養実験を行った。摂餌速度、生存率、卵生産速度の測定とA. steueriメス成体・生産された卵・排泄された糞粒・各餌料藻類種の脂肪酸組成を分析した。A. steueriの摂餌速度、生存率、総脂肪酸量は各餌料条件毎に有意差はみられなかった。6日の培養期間における積算卵生産数は、 T. weissflogii摂餌区で13.5 ± 15.7 eggs female-1、C. gracilis摂餌区で3.37 ± 3.7 eggs female-1、D. tertiolecta摂餌区で5.3 ± 4.0 eggs female-1となり、T. weissflogii摂餌区の積算卵生産数はC. gracilisおよびD. tertiolecta摂餌区に比べ有意に高い値を示した (Tukey-Kramer, p < 0.01)。主成分分析により、卵生産数を増加させる脂肪酸組成はC20、C18:2n-6およびC20:5n-3であり、減少させる脂肪酸はC18:3n-6であった。以上のことから、本研究におけるA. steueriの最適な餌料藻類はT. weissflogiiであると示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究分野では、餌料藻類に含まれる脂肪酸の量、および組成と、かいあし類の卵生産速度の関係が長年にわたり調査されてきた。かいあし類の摂餌速度は餌料藻類の細胞サイズや形態、摂餌選択性によって大きく変化するため、かいあし類の摂餌量を考慮した特定の脂肪酸と卵生産速度の関係を評価する必要がある。そこで、本研究ではかいあし類の摂餌量を考慮した摂取脂肪酸量を算出し、餌料藻類、メス成体、生産された卵、排泄された糞粒の脂肪酸組成を包括的に調査し、A. steueriの卵生産速度に影響を与える脂肪酸を特定することを可能にした。既往研究で数多く報告されている、かいあし類の卵生産を増加させる多価不飽和脂肪酸のほかに、炭素数20の飽和脂肪酸が本種の卵生産に最も重要な脂肪酸であることが明らかとなった。この事実は、本種の大量培養システムにおける最適餌料を検討するうえで重要な知見である。当該年度に実施する予定である、他のかいあし類種の最適餌料藻類を検討するためにモデルとなる実験手法が確立できたため、今後の利用が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
高生残率・高生産率・高栄養価を示すかいあし類種と微細藻類種の最適な組み合わせを、かいあし類の高付加価値物質の含量、卵生産数・生存率を基準に決定することを目的として (研究課題①)、Oithona属かいあし類やTigriopus属かいあし類、Pseudodiaptomus属かいあし類などを対象に培養実験を引き続き実施する。餌料藻類は、EPA・DHAを高い割合で含有する、Rhodomonas sp., Isochrysis sp., Chaetoceros sp.や、アスタキサンチンなどカロテノイド系色素を高い割合で含有するHaematococcus pluvialis、Chromochloris zofingiensisなどを用いる予定である。 産卵様式(抱卵型・自由放卵型)に合わせた、新規に研究開発するかいあし類の培養装置を用いてスーパーかいあし類の大量培養を達成するために(研究課題②)、培養装置の設計・製作に着手する。当該年度は、すでに考案している水質改善および共食い防止機構を備えた、自由放卵型かいあし類の培養装置をもとに、ラボスケール (3L)のリアクターシステムを製作し、中・長期的な連続培養実験を実施する。
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