研究課題/領域番号 |
19H03168
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
楯 真一 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 教授 (20216998)
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研究分担者 |
安田 恭大 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 助教 (40816344)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 液液相分離 / 天然変性タンパク質 / NMR / 共焦点顕微鏡 / 質量分析 |
研究実績の概要 |
新規ストレス顆粒(SG)含有タンパク質の機能解析:細胞内光架橋反応でSG構成タンパク質のTIA1と物理的にコンタクトするタンパク質として同定されたVCPが,細胞内で形成される顆粒内のATP濃度を時間依存的に低下させることで,顆粒の細胞内滞留時間を制御するタイマーの役割を持つ事を明らかにした.論文発表済み. ウイルス複製過程に関与するタンパク質の液液相分離:肝炎ウイルスのコートタンパク質に結合するタンパク質が液液相分離を形成することで,顆粒内でコートタンパク質の再構成を促進することを明らかにした. ストレス顆粒構成タンパク質の時間変化:SGを構成する主要タンパク質であるTIA1とG3BPがストレス顆粒形成時点から20, 40, 60minの時点で細胞内光架橋反応でそれぞれのタンパク質に物理的に接触しているタンパク質変化を解析した.その結果,TIA1では296種類,G3BP1では239種類のタンパク質が物理的に接触していること見いだした.TIA1,G3BP1に結合するタンパク質毎に時間と共に局在する量の変化を追跡し,40分で過渡的に増加するもの,時間と共に減少するものなど,時間依存的な変化が異なるタンパク質の存在を確認した.また,各タンパク質の時間変化と,タンパク質間の相互作用ネットワークのデータベースから,それぞれのSGの構成タンパク質の時間変化を規定するハブとなる候補タンパク質を絞り混んだ.今後は,このハブタンパク質のノックアウトによりSG形成時間変化に対する影響を解析する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた細胞内顆粒構成タンパク質の時分割変化は,計画通り計測に成功し,予想以上に特異な挙動があることを見いだした.今後は,生命情報学から推定される構成タンパク質の挙動を実験的に確かめることで,液液相分離によりリクルートされるタンパク質の変化のもつ意味を明らかにする. 同時に,研究の過程で見つかってきた新たなタンパク質が,顆粒の細胞内寿命を決めるタイマーであることや,ウイルスの複製を制御する機能を持つことを発見するなど,副次的な研究展開もあり当初よりも広い成果が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
SGの構成タンパク質の時間変化を制御する,ハブとなるタンパク質が生命情報学的解析から推定できた.今期は,該当するハブタンパク質をノックアウトすることで,SG形成や,細胞内応答がどのように変化するかを解析する.同時に,基盤Bの研究をさらに発展させるために,インビトロでの再構成に着手して次のステップの研究展開につなげる. ウイルス複製における,タンパク質の液液相分離の役割については,すでウイルスコートタンパク質が液滴中に濃縮されることを見いだしている.今期の研究では,コートタンパク質が液滴中にリクルートされる機構をNMRと共焦点顕微鏡を用いて解析する.
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