研究実績の概要 |
高Klf4発現iPS細胞(HighK細胞)と低Klf4発現iPS細胞(LowK細胞)のクロマチン状態とKlf4結合を、ATAC-seq、ChIP-seqの結果を元に解析した。その結果いずれの細胞でも、Klf4が結合している領域の80%以上でクロマチン構造がopenであった。次に、HighK細胞特異的にKlf4が結合している領域(hiKlf4領域)のクロマチン構造を解析した結果、LowK細胞ではClose状態が多いのに対し、HighK細胞では殆どがOpen状態であった。そして、LowK細胞でClose状態であったhiKlf4領域の付近には、多能性制御に関わる遺伝子や多能性獲得に関係するエンハンサーが多く存在していた。これらの結果から、Klf4は量依存的にゲノムDNAに結合し、多能性誘導に関係する領域のクロマチン構造をopenにして多能性獲得に寄与していることが明らかになった。 また、CRISPR-Cas9を利用して、ゲノム上の特定の領域に結合したタンパク質を回収し、質量分析によって回収されたタンパク質を同定する方法(CAPTURE法)を利用して、Nanog遺伝子プロモーターに存在するhiKlf4領域に結合するタンパク質の同定を試みた。その結果、ES細胞ではこの領域にBclaf1, Fubp1, Msh6, Park7, Psip1, Thrap3らが結合しており、Park7, Psip1, Thrap3の発現を抑制すると分化への抵抗性が、Fubp1の発現を抑制すると多能性の減少が観察された。以上の結果から、これらの分子はNanog 遺伝子プロモーターに結合しており、Park7, Psip1, Thrap3は分化誘導の進行に、Fubp1は多能性の維持に関与していることが示唆された。また、このようにCAPTURE法を応用することによって、ゲノム上の任意の領域に結合するタンパク質を同定できることも明らかになった。
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