研究課題
アルツハイマー病の原因は明らかでなく、根治治療法がないのが現状である。この進行性神経変性疾患のリスクファクターに加齢があり、加齢に伴う脳細胞外Zn2+動態の変化がこのリスクファクターと関連すると仮定し、研究を展開してきた。定常時の神経細胞内Zn2+濃度は約100 pMであるのに対して、細胞外Zn2+濃度は約10 nMと高く、加齢に伴い増加する。加齢に伴う細胞外Zn2+恒常性の変化と関係するZn2+流入が神経細胞内Zn2+恒常性を破綻させ、細胞死を惹起すると仮定した。アルツハイマー病の原因物質と考えられているアミロイドβ(Aβ)の神経細胞内集積はその発症と密接に関係すると考えられている。脳細胞外液に放出されたAβ1-42は100~500 pMに達すると、細胞外Zn2+と結合し、シナプス神経活動に依存せずに海馬神経細胞に速やかに取り込まれる。細胞内では、Zn2+はその濃度が低いためにZn-Aβ1-42から遊離し、神経細胞死を惹起する。メタロチオネイン誘導合成を機軸とした神経細胞内Zn2+恒常性維持はアルツハイマー病の新たな予防戦略につながることをヒトAβ1-42を投与したマウス、ラットで明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題に関する研究成果は2020年に国際学術雑誌に7報の論文として掲載されたことより、本研究課題は順調に進呈している。
漢方薬である人参養栄湯によるAβ毒性軽減作用はメタロチオネイン(MT)誘導合成によることが明らかになった。MT合成を増加させる物質を同定し、MT合成のメカニズムを明らかにする。さらに、イグサ成分であるデヒドロエフソールによるAβ毒性軽減作用もMT誘導合成によることが明らかとなった。その誘導合成のメカニズムを明らかにする。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
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