研究課題/領域番号 |
19H03462
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
嘉糠 洋陸 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50342770)
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研究分担者 |
大手 学 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (20386717)
相内 大吾 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (50552783)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 蚊 / ヤブカ / ボルバキア / 細胞内共生細菌 / デングウイルス / RNA / 複製 |
研究実績の概要 |
病原体媒介蚊のパラトランスジェネシスの重要なツールとして、ボルバキアが注目されている。ボルバキアはグラム陰性の偏性細胞内共生細菌であり、地球上の半数以上の昆虫種に感染している。このボルバキアが感染した宿主昆虫細胞では、デングウイルスなどのプラス鎖RNAをゲノムに持つウイルスの増殖が抑制されることが知られている。この性質を利用し、ウイルス媒介能が著しく低下したヤブカ系統が複数樹立され、世界各地で野外に放飼されている。ボルバキアによるRNAウイルス増殖抑制機構の全容解明を試みた。ボルバキアは垂直伝播のために宿主昆虫の雌生殖細胞に感染するが、この時、宿主細胞質でRNA-タンパク質複合体P bodyと共局在する。ボルバキアがP bodyタンパク質の働きを撹乱し、宿主RNAの翻訳を制御することを明らかにした。この機構がボルバキアによるRNAウイルス抑制の基盤となる可能性について、特に、ボルバキアが標的とする宿主雌生殖細胞のP body構成因子について、ボルバキアによるRNAウイルスの増殖抑制への関与について検討した。その結果、ヤブカ培養細胞にてデングウイルス複製サイトに複数のP body因子が集積することが明らかとなった。また、P bodyの撹乱に関与するボルバキアタンパク質TomOによってデングウイルスの増殖が抑制された。加えて、ボルバキアはデングウイルス複製初期のウイルスRNAの動態に影響を与え、TomOも同様の効果を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネッタイシマカ等におけるボルバキアによるRNAウイルス増殖抑制機構ついて、当該年度の研究により、ある種のRNA-タンパク質複合体が抑制の起点となっていること、およびその分子基盤の一端が明らかになった。ボルバキア側の分子がどのように相互作用するかについても基礎的データが積み重なっており、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
病原体-蚊間相互作用のバランスにおいて、蚊に存在する真菌・細菌・細胞内共生微生物など他種の微生物が重要な役割を果たしている。微生物の介在により昆虫の性質を間接的に改変するパラトランスジェネシスにおいて、(1)蚊と(2)病原体、そして(3)他種微生物群の三者相互作用について、真菌、細菌、および細胞内共生微生物を対象に、研究計画通りに推進する。
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