研究課題
Aβオリゴマーはシナプス毒性を持ち、アルツハイマー病(AD)における記憶障害発症分子基盤と考えられている。すでにAβオリゴマー特異的抗体を作成することで、ADモデルマウス(Tg2576)で一旦発症した記憶障害の回復効果及び記憶障害発症予防効果、さらに抗体投与マウスでのシナプス保護効果を報告してきた。本研究ではこのAβオリゴマーを標的とする治療抗体の最大の弱点である血液脳関門通過性の克服を図る。この目的のために作成した最小フラグメント化分子による前臨床試験で、すでにTg2576では記憶障害発症予防効果を確認している。本研究ではこの分子をプローブ化して細胞内外に局在する脳内Aβオリゴマーをリアルタイムで可視化する新規画像バイオマーカーを創出する。診断と治療に同一効能薬剤を用いることで、現行のPETイメージングでは見逃されている真の予防介入が必要なADリスク対象を漏れなく選別し、個別化標的医療へと進化・変貌させたADの二次予防医療実現を目指す。現在までに、同設計分子をADモデルマウス(APP-NL-F-G KI)に経皮投与した結果、主に神経細胞内への局在が見いだされており、血液脳関門及び細胞膜通過能が確認できている。さらに、マイクロダイアライシスプローベを自由に動き回れる同ADモデルマウスの側脳室・海馬に留置し透析液を解析したところ、経静脈・経皮・経鼻投与のすべての投与法で設計分子の回収がなされ、血液脳関門・血液脳脊髄液関門移行が確認されている。特に経鼻投与での脳内移行が最も優れていることが確認できている。
2: おおむね順調に進展している
経皮投与での血液脳関門通過能をアルツハイマー病モデルマウス(APP-NL-K-F KI)で検証し、2h-24hrまで主に神経細胞内に移行・局在することを確認した。また経鼻・経皮・経静脈投与後に、同マウスにおける血液体内動態と海馬と側脳室内に設置したマイクロダイアライシスプローブ解析を施行し、血液脳関門移行を確認した。また、経鼻投与でのアルツハイマー病モデルマウス(APP-NL-K-F KI)における前臨床試験を開始した。一方、PET画像診断に向けては、当該分子のジルコニウム標識の基礎的検討を開始している。
前臨床試験での記憶障害発症予防効果確認とPET画像イメージング取得を目指す。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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