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2020 年度 実績報告書

癌周囲微小環境を構成する癌関連線維芽細胞を標的とした新たな肺癌治療の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19H03745
研究機関大阪大学

研究代表者

新谷 康  大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90572983)

研究分担者 南 正人  大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (10240847)
大瀬 尚子  大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10570559)
舟木 壮一郎  大阪大学, 医学系研究科, 講師 (50464251)
狩野 孝  大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70528455)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード肺癌 / 癌周囲微小環境 / 腫瘍免疫 / 癌関連線維芽細胞 / 上皮間葉移行
研究実績の概要

肺癌周囲微小環境における癌関連線維芽細胞(CAF)が、TGF-βやIL-6を中心としたサイトカインによって、上皮間葉移行(EMT)経路を介して癌細胞の悪性化・癌幹細胞様形質獲得に関与することを明らにした。さらに、近年はCAFによる免疫抑制ネットワークの形成が注目されており、CAFが癌腫および抗腫瘍免疫応答へ及ぼす影響を明らかにし、CAFを標的とした新たな肺癌治療を考案することを目的に本研究を計画した。
肺切除標本から初代培養によって肺癌組織中の間質細胞(CAF、T細胞)を採取し、癌進展に関わる遺伝子発現、蛋白発現を解析したところ、CAFでは線維芽細胞の活性化マーカーに加えてPodoplaninやHyaluronanの発現が上昇しており、EMT経路に加えて細胞増殖に関与することを見出した。さらに、線維化にも関係する因子として、Periostin、Collagen triple helix repeat containing 1 (CTHRC1)を新たに同定し、肺切除標本における免疫染色や細胞実験から、Periostinは癌細胞の増殖能に、CTHRC1は血管新生に関与していることを明らかにした。さらに、T細胞をCAFと共培養することで、IFN-γ, IL-2産生能が低下した。また、抗線維化剤であるPirfenidoneによってCAFの活性化を抑制した場合、CAFのPodoplanin, Periostin, CTHRC1発現が低下し、癌細胞でのEMT誘導が抑制され、免疫細胞の細胞障害活性が上昇した。以上より、CAFの制御によって微小環境が再構築され、免疫抑制ネットワークを阻害できる可能性が示唆された。
薬剤耐性を生じやすい癌細胞に比較してCAFを標的とした癌治療では治療抵抗性を生じにくいと予測され、CAFを効率よく制御する薬剤を探索していく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在、PeriostinがCAFと癌細胞とのクロストークを媒介する中心的な役割を担い、CAFのIL-6分泌を制御することを見出し、Periostinのシグナル伝達経路を抑制することによる免疫細胞の細胞障害活性の変化について解析を行っている。Periostinの発現制御を行ったCAFや受容体を抑制した癌細胞を構築できており、細胞実験だけではなく動物実験へも応用できる。また、豊富に蓄積したヒト切除検体で、細胞実験や動物実験で明らかになった結果を検証できる。

今後の研究の推進方策

本年度は以下の解析を予定している。
・Periostinのシグナル伝達経路を抑制する実験系(中和抗体、Periostin受容体Integrin シグナル伝達経路を抑制する実験系)を確立し、免疫細胞の細胞障害活性の変化について解析を行う。細胞障害活性の測定には、各サイトカインの測定に加えて、生細胞を用いて行うBiTE法(T細胞とがん細胞が架橋するように設計された修飾抗体を用いたT細胞の活性測定法)を用いる。
・動物モデル(マウスへの癌細胞とCAFの同所共接種モデル)を用いて、免疫細胞の動向を解析する。生体内での免疫細胞を解析するため、マウス由来癌細胞、マウス由来肺線維芽細胞(細胞株)を用いる。サイトカインで活性化した肺線維芽細胞やPeriostinを過剰発現またはノックダウンした肺線維芽細胞を癌細胞とマウス肺に接種し、腫瘍形成能の評価および形成した腫瘍内のリンパ球をフローサイトメトリーで解析を行う。
・外科手術で得た切除標本における、CAFと腫瘍組織浸潤リンパ球(TIL)や制御性T細胞の関連を明らかにし、Periostin発現との相関関係を明らかにする。
・上記と同様の実験系で、CAFによる免疫抑制ネットワークの形成におけるPodoplanin, CTHRC1の役割を解析する。
・抗線維化剤、マルチキナーゼ阻害剤を中心に、CAFを効率よく制御する薬剤を同定し、CAFによる免疫抑制ネットワーク形成に対する影響を明らかにする。また、Bromodomain and extraterminal [BET]タンパクに対する低分子阻害剤JQ1、ビグアナイド系薬剤Metforminなどの中からCAFに選択的な治療を考案する。さらに必要に応じて、ドラッグ・リポジショニング化合物ライブラリー(Prestwick chemical社)を用いて、CAF活性の抑制変化を解析する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Effects of pirfenidone targeting the tumor microenvironment and tumor-stroma interaction as a novel treatment for non-small cell lung cancer2020

    • 著者名/発表者名
      Fujiwara Ayako、Funaki Soichiro、Fukui Eriko、Kimura Kenji、Kanou Takashi、Ose Naoko、Minami Masato、Shintani Yasushi
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 10 ページ: 10900

    • DOI

      10.1038/s41598-020-67904-8

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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