研究課題/領域番号 |
19H03867
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
小松 康宏 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (60195849)
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研究分担者 |
田中 和美 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (30526843)
中山 和弘 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 教授 (50222170)
小松 浩子 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 教授 (60158300)
滝沢 牧子 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70613090)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 患者参加型医療 / インフォームド・コンセント / 共同意思決定 / 患者諮問委員会 |
研究実績の概要 |
社会の高齢化が進行し、非感染性疾患が増加している今日、医療の質と安全を高めるうえで患者参加型医療の重要性が増している。患者参加型医療の形態は多岐にわたるが、患者が自らの疾患や治療について理解し、治療方針や治療方法を決定すること、病院運営に患者の視点を反映させることが特に重要である。本研究の目的は、(1)患者参加型医療の国内外の現況と課題を明らかにすること、(2)患者が治療選択決定に主体的に参加するインフォームド・コンセント(IC)、共同意思決定に関する医療者教育の開発と評価である。(1)に関しては、文献ならびに学会参加を通じ患者参加型医療の国際的動向を調査し、その結果を論文にまとめるとともに、学会・講演会を通じ啓発活動を行った。また、慢性腎臓病患者を対象とし、国際的に活用されている患者参加度尺度(patient activation measure 13)を用いて本邦の患者参加度の実態を明らかにするWEB調査を実施し、現在結果を解析しているところである。 (2)に関しては、米国医療研究質庁(AHRQ)が開発した医療者用IC教育教材の翻訳許可を取得し、翻訳を完了した。米国の医療者を対象としたものなので、そのままわが国の医療者に適用することは難しいため、わが国の実情にあわせた教材を開発中である。また、理想のICといわれる共同意思決定に関し、国際的な動向を調査しその結果を論文化するともに、共同意思決定に関する教科書を作成し、医療者の意思決定支援の研修に役立てるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献調査、学会参加、海外の研究者とのメール交換等で情報を収集し、国際的な患者参加型医療の概要を明らかにすることができた。調査結果は、独立行政法人国民生活センターの機関紙である「国民生活研究」第59巻第2号に「患者参加型医療が医療の在り方を変えるー21世紀医療のパラダイムシフト」と題する論文を発表した。本邦で患者が医療に対しどの程度主体的に参加しているかを明らかにするための調査研究を開始した。慢性腎臓病患者を対象に、国際的に広く使用されている「患者参加度尺度(Patient Activation Measure, PAM-13)」を用いたWEB調査を実施し、約1400名の回答を得た。患者参加度の実態を明らかにするとともに、ヘルスリテラシー、健康関連QOLとの関連を解析中である。患者参加型医療には、患者や市民の視点を病院運営、研究、医療政策に反映させる活動も含まれる。病院運営に患者の視点を反映させる「患者諮問委員会(patient advisory committee)」は、北米では多くの病院に設置されているが、わが国の大学病院で設置しているのは群馬大学病院のみである。米国に現地訪問を行い、具体的な活動内容に関し情報収集するとともに、活動上の課題を協議する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大、遷延に伴い、海外の現地訪問は実施できず、今後の課題として残されている。インフォームド・コンセントや共同意思決定(SDM)に関する医療者教育の教材開発をすすめてきた。「慢性腎臓病患者とともにすすめるSDM実践テキストー患者参加型医療と共同意思決定」と題する教科書を医学書院から発行することができた。インフォームド・コンセントの教材開発資料として、米国AHRQの開発した指導者用テキスト、医療者教育用スライドセットの翻訳を完了し、日本の医療者に適用できる教材を開発している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の活動計画として、(1)国内外の病院における患者諮問委員会の実態調査をとりまとめ、今後の本邦における患者諮問委員会活動の発展につなげる、(2)本邦の慢性腎臓病患者を対象とした医療への患者参加度の実態調査を解析し、患者参加の実態ならびにヘルスリテラシー、健康関連QOLとの関連を明らかにし論文化する、(3)わが国に適合する医療者用のインフォームド・コンセント教材を完成させ、その効果を評価する、といった研究活動を継続、発展する予定である。 患者参加型医療に関する国際学会、集会はこれまでWEB開催が主体であったが、徐々に現地開催がみられるようになってきた。国内外の病院における患者諮問委員会の実態調査は、新型コロナウイルス感染の状況に応じ、可能な限り現地訪問を実施する予定である。症国内の病院に対しては、質問票を用いた実態調査とその分析を行う。(2)の本邦の慢性腎臓病患者を対象とした医療への患者参加度の実態調査については、「本邦の慢性腎臓病患者のヘルスリテラシーと医療への患者参加に関する実態調査(UMIN試験ID:UMIN000046946)」として開始し、すでに約1400名の回答を得ている。慢性腎臓病は世界的な公衆衛生学的課題となっているが、他の慢性疾患に比し、患者参加度が低いといわれている。本邦の実態と健康関連QOLやヘルスリテラシーとの関連を明らかにし、患者参加型医療の重要性を示すエビデンスとして発信したい。(3)については、わが国に適合する医療者用のインフォームド・コンセント教材開発として、動画、マンガ、iPad教材など多様な教育ツールを開発し、評価と実装につなげていく。
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