研究課題
毎年1000万トンを超える廃プラスチックが海洋に蓄積を続けている。しかし、海面に浮かぶプラスチックは氷山の一角に過ぎず、大部分が行方不明となっている。一方、海洋へ流入したプラスチックの大部分は深海に沈んだと予想されている。本課題は、行方不明プラスチックの行方を求めて、アジア諸国から大量のプラスチックが流れ込み集積する日本周辺の深海底において、プラスチックごみの分布と量を明らかにし、行方不明プラスチックの謎に答える一助とする。海洋研究開発機構(JAMSTEC)が過去30年間に記録してきた深海映像データには、しばしばポリ袋などの海洋ごみが映っており、約5,000潜航調査の映像からすでに1,000を超す海洋ごみが確認されている(深海デブリデータベース)。当該年度は、深海デブリデータベースのうち、昨年度にターゲットにしていなかった海域で記録されたマクロプラスチックの定量を試みた。具体的には、東北沖において潜航調査がなされた深海底の映像データについて、(1)その映像に映る海底面積(km2)を深海探査機の走行距離・探査機の高度(m)・映像視野から求め、(2)潜航調査あたりのプラスチックごみの計数およびサイズ計測を行った。さらに深海デブリデータベースにまだ登録がない潜航調査による映像データを取得し、プラスチックごみの定量を行った。具体的には、駿河湾(最大深度2500m)において実施された潜航調査の映像解析を行った。その結果、駿河湾では深い水深帯でごみが多い結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
深海デブリデータベースにおけるプラスチックの定量作業はおおむね終了したため。また、昨年度の研究実績で得られた房総半島沖の深海プラスチックごみ定量調査の結果が論文として公表された。深海底のマイクロプラスチックを定量調査する手法についての総説も発表した。
今後は、プラスチックごみが蓄積されていると予想される深海底(四国半島沖、深度5000m)において潜航調査を実施し、映像データの取得とプラスチックごみ試料の採取を行い、当該海域におけるプラスチックごみの定量を行う。
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Marine Pollution Bulletin
巻: 166 ページ: 112188
10.1016/j.marpolbul.2021.112188
海の研究
巻: 29 ページ: 129-151
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