研究課題/領域番号 |
19H04332
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
佐藤 一光 東京経済大学, 経済学部, 准教授 (40726866)
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研究分担者 |
斉藤 崇 杏林大学, 総合政策学部, 教授 (50424213)
吉弘 憲介 桃山学院大学, 経済学部, 教授 (50537628)
徐 一睿 専修大学, 経済学部, 教授 (50579331)
澤田 英司 九州産業大学, 経済学部, 准教授 (70458925)
山川 俊和 大阪産業大学, 経済学部, 教授 (70572395)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 木質バイオマス / 再生可能エネルギー / FIT / 気候変動 / 静脈産業 / 地域産業 / 林業 / 中国経済 |
研究実績の概要 |
2020年度の研究計画は、1)木質バイオマスエネルギーの経済効率的な利用の条件に関する理論モデル分析と、2)実地調査による日中の木質バイオマスエネルギー利用の事例研究を行うことであった。 1)に関連して予定していた伐採タイミングに関するモデルを導入し、二酸化炭素を吸収するシンクとしての役割を明確化することで、木質バイオマスのエネルギー利用は割引率を通じて二酸化炭素排出の割引現在価値を高める効果があることが分かった。FIT等のシナリオ分析を行うために日本全国の森林蓄積データを入手し、データベース化し、地図データとの統合を進めた。データベース化の進捗は95%程度であるが、地図データとの統合に関しては各都道府県と国有林で全てフォーマットが異なるなど難航しており10%程度の進捗に留まっている。地域別の経済効果を分析するために構築を進めていた都道府県間産業連関表が完成し、木質バイオマス利用の地域別の経済効果について分析を行い、 FITを通じた木質バイオマスの利用は地域経済の付加価値を高め資金流入を促す効果があることを実証的に示すことができた。 2)に関連して、コロナ禍で国内の実地調査は予定の25%程度に留まっており、中国の実地調査は実現できなかった。資料やオンラインによるヒアリングに基づく調査は進められており、日本と中国の<木質バイオマス経済>の把握には一定の成果があった。日本の森林は間伐期を経て主伐期に到達しており、間伐材を中心としたFITの設計とは齟齬をきたしていることが調査を通じて発見された。特に主伐後の植林が十分に進んでおらず、未利用材の買取りだけでは持続可能な森林利用に繋がっていないことが分かった。中国については農林バイオマスと呼ばれる廃棄物利用が進んでいるが、利用促進政策は進んでおらず、植林期から間伐期への移行に十分に対応できていない可能性があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度より構築を進めていた地域間の距離情報を含んだ地域間産業連関表の構築が終了し、木質バイオマスの利用による地域間の経済波及効果の分析を行った。FITを通じた地域間の資金循環を分析するにあたり、公共部門を通じた地域間の資金循環モデルを構築する必要があることが分かり、SNAベースでの分析方法の開発と応用について研究を進めており、2022年度中には完成する予定である。木質バイオマスのエネルギー利用に関する政治経済学的アプローチ、森林の二酸化炭素のシンクとしての経済学的評価モデル、未利用材という廃棄物を有効利用する静脈産業モデル、FITとは別の森林環境税という公的セクターの機能分析、中国の実態についての文献・ヒアリング調査は完了した。 他方で、次の2点に関しては予定より進捗に遅れがある。森林の蓄積データをGIS上に記載して、FITの買取価格の変化によって利用可能となる木質バイオマス資源のシミュレーションの準備を進めているが、各都道府県で全てフォーマットが違ったり、データに不備があったりと想定以上にデータベース構築に時間がかかっている。中国における木質バイオマス発電所、林業、木材産業の実地調査についてコロナ禍による移動制限のため実地できていない。 学会での研究成果の報告を1回、全体の研究会を5回開催し、研究成果の外部研究会での報告も複数回行なった。予定していた日中カンファレンスは中国での実地調査が行えなかったことから延期することとした。これらの研究成果は、論文として公刊されたもの、学術雑誌に投稿して査読中のもの、学術雑誌に投稿予定のものがあり、全体の取りまとめとして書籍として公刊する準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
延長期間である2022年度には研究成果全体の取りまとめの書籍『木質バイオマスの環境経済学』を公刊する予定である。書籍の推敲が進む年末から年度末にかけて、中国の研究者と日本の研究者での国際カンファレンスを予定している。 取りまとめ以外の研究成果として、The Asian Association of Environmental and Resource Economics(ホーチミン)、経済理論学会、環太平洋産業連関分析学会、林業経済学会での報告及び報告論文の投稿を予定している。 進捗が芳しくなかった国内の実地調査を進め、及び中国での移動制限が緩和されるのであれば中国における実地調査を行う。 森林の都道府県別蓄積データのGIS化を完成させ、英文ジャーナルへの投稿を年度内に完了させる。
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