研究課題/領域番号 |
19H04338
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野間口 大 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (90362657)
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研究分担者 |
藤田 喜久雄 大阪大学, 工学研究科, 教授 (10228992)
原 圭史郎 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30393036)
上須 道徳 大阪大学, COデザインセンター, 特任准教授(常勤) (50448099)
木下 裕介 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (60617158)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | モデルベースデザイン / 持続可能社会 / 市民参加 / 政策立案 / フューチャー・デザイン |
研究実績の概要 |
フューチャー・デザイン(FD)は,持続可能社会実現に向けて将来世代の視点を取り込む社会システムのデザインと実践である.本研究では,システムモデリングの作業が人々の対話や合意形成に与える効果を科学的に解明し,その知見に基づいたモデルベースFD方法論を構築することを目的とする. それに向けて本研究では,(1)フューチャー・デザインワークショップ(FDWS) のためのモデリング手法の開発,(2)FDWS の実施,(3)手法の効果の分析,(4)モデルベースFD方法論の構築,の4 つの課題を設定している. 2019年度では各課題について,下記の研究を行った.(1)について,代表的なシステム思考手法の一つである因果ループ図に着目し,FDWS に適したモデリング手法を開発した.並行して,マルチエージェントシミュレーションによる定量的モデリング手法を検討した.(2)について, 大阪府吹田市における環境基本計画策定のための市民ワークショップ(吹田市WS),および京都市における「京都市1.5 ℃を目指す将来世代職員フューチャー・デザイン会議」と称するワークショップ(京都市WS)をデザインし,実施した.吹田市WSではモデルを用いないセッションを実施した.京都市WSではモデルを用いずに仮想将来世代の討議を行うセッションと,モデルを用いて仮想将来世代の討議を行うセッションを実施し,後者に(1)の手法を適用した.いずれにおいても参加者の発言を録音し,文字情報として記録した.(3)について,テキストマイニング分析により議論活性度を定量的に評価する手法を新たに開発した.(2)で取得した討議記録に適用して分析した結果,因果ループ図を用いて将来世代の討議を行うことにより,因果ループ図を用いない場合と比べて有意に議論活性度が向上することが分かった.(4)について,(3)の知見の活用の検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」欄に記載した通り,4つの研究課題について当初の予定通り実施し,研究を進めることができている.なお,2019年12月, WS参加者の発言記録データのテキストマイニングを業者に委託したところ,発言データの録音状態が悪く文字起こし作業に想定以上に時間がかかり業者の納期が遅延することが判明した.テキストマイニングは非常に時間がかかる作業のため委託が不可欠であり,効率的な研究遂行上,前半のWS結果のテキストマイニングおよび分析を先行して進め,後半WS分を2020年度に実施する必要が生じた.これについても計画通りに実施し,研究を進めることができた. 以上により,研究はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度においても,2019年度の成果を踏まえながら,「研究実績の概要」欄に記載した4つの研究課題を進め,モデルベースFD方法論の確立を目指す. (1)については, 2019年度に行ったモデリングツールの検討を踏まえ,因果ループ図とマルチエージェントシミュレーションに着目し,その活用方法の確立および洗練化を行う.(2) については,具体的なテーマを設定して,モデルを用いずに進めるWSとモデルを用いて討議を進めるWSを実施し,それぞれにおける現世代,将来世代の行動の差異を発言傾向から浮かび上がらせる.なお,新型コロナウイルス感染拡大に伴う各種措置により,多数の参加者を1か所に集めることが困難となる可能性がある.これについては,社会状況を見極めつつ,Web会議システムなどの活用による実施を検討する.(3) については, 2019年度において,WS参加者の発言記録に対してテキストマイニング分析を行い,出現単語の頻度や重要度,単語間の共起ネットワークを調べ,WSの議論内容の変化の調査を先行して実施した.本年度においてはその成果をさらに掘り下げ,本年度に実施するWSの分析に適用しながら,分析結果への考察を深める.(4)については,WS とその分析結果に基づいて,フューチャー・デザインの方法論としての仮説を提示する. また,研究の過程で,適宜,市民参加型討議の研究で先行する海外の研究者,特にドイツ・ハンブルク大学の研究チームと意見交換を行う.
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