研究課題/領域番号 |
19H04507
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
硯川 潤 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 福祉機器開発部, 研究室長 (50571577)
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研究分担者 |
長谷 和徳 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (10357775)
近藤 知子 杏林大学, 保健学部, 教授 (90274084)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 筋骨格モデル / ハンドル型電動車椅子 / 操作ログ / 操作負担 / 慣性センサ |
研究実績の概要 |
・筋骨格モデルの構築と操作負担推定 シニアカーの操作負担推定のためのモデルとして,一般的なシニアカー車体のモデルとそのメインユーザの体格に合わせた身体モデルによる連成モデルを構築した.また,この連成モデルを用いてシニアカーの運転操作中の姿勢を再現するシミュレーションモデルを作成した.特に,剛体同士の接触が考慮されないソフトウェア上でも接触やすべりの関係を現実に近い形で再現する方法を考案した.また,シニアカー運転操作中の姿勢変化による負荷を最小にする最適化計算において,ハンドルとアクセルレバーの回転角度の制約のように計算上の制約条件に加えることが困難である場合の解決策として,評価関数に制約項として加えることで最適化の条件として扱う手法を提案した.以上の検討から,ハンドルを回転する動作が身体モデルの関節トルクへ与える影響は大きく,アクセルレバー操作に必要な指先の動作の巧緻性を評価する際は,関節トルクに加えハンドル操作の影響を考慮する必要性が示唆された. ・計測用車体の製作と精度検証 慣性センサを使用してハンドル型電動車椅子の簡易な操作ログ取得システムの構築を行った.今年度は,車体の傾斜や加減速や旋回による加速度を補正するために,車体に設置したセンサによる補正のアルゴリズムを検討し,精度の高い操作ログ推定を目指した.そのために,慣性センサで計測する加速度・角速度の組み合わせにより推定方法が複数パターン試行したる.そのうえで,走行していない状態での静的推定精度検証と走行状態での動的推定精度検証を行った.静的推定精度検証では,傾斜補正をした場合は路面状況によらず推定方法間で精度が概ね変わらなかった.動的推定精度検証では,直進やカーブ等のコースの走行実験から推定精度を評価した.その結果,衝撃加速度等の影響に対して頑健な推定アルゴリズムを構築できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,筋骨格モデルによる操作負担推定を導入した走行センシング技術を開発し,身体と車体の相互作用を考慮した安全評価基盤の創成を目的としている.特に,筋骨格モデルによる身体負荷や姿勢安定性の推定のために,操作負担の推定を近似的に実現する手法を開発することが重要となる.今年度は,そのための基盤的な手法として,一般的なシニアカー車体のモデルとそのメインユーザの体格に合わせた身体モデルによる連成モデルを構築した.また,この連成モデルを用いてシニアカーの運転操作中の姿勢を再現するシミュレーションモデルを作成し,そこから近似的な負荷推定を行うための重要な要件を得ることができた.また,実際の走行モニタリング手法としても,後付けの慣性センサを用い,利用現場での設置・運用の実現可能性に配慮した簡易かつ高精度な手法を提案できた.次年度以降はこれらの手法を組み合わせ,走行環境や車体特性が操作負担等に与える影響を検討できる.
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今後の研究の推進方策 |
抽出した要求仕様に適合したシステム構成で,構築した筋骨格モデルにもとづいて操作負担を算出するための近似手法を開発する. また,近似による誤差の程度を明らかにし,開発手法の妥当性を確認する. 走行・操作状態は先行研究の知見などにもとづいて分類の粒度を決定し,機械学習等を用いて分類器を構築する. [運動軌道の設定による近似] ハンドル可動域に沿った上肢運動軌道や座位姿勢などに由来する運動軌道を筋骨格モデルに適用する. これにより,接触点が軌道に沿った1自由度運動をしているとみなせる. この方法により,ハンドルやアクセルレバーの操作角度など,車体に設置したセンサのみで得られる情報から,関節駆動モーメントを部分的に推定することを試みる. [走行・操作状態の分類器構築] これまでの研究成果をもとに,車体・アクセルレバーに設置したセンサ計測値から走行・操作状態を分類するアルゴリズムを構築する. 機械学習が必要な分類にはサポートベクタマシンを主として用いる. 学習データは,多様な路面形状を再現した試験走行路で収集し,手動での状態分類を教師データとする.
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