研究課題/領域番号 |
19H05655
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石川 冬木 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (30184493)
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研究分担者 |
若林 雄一 千葉県がんセンター(研究所), がんゲノムセンター 実験動物研究部, 部長 (40303119)
岡本 康司 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (80342913)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2023-03-31
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キーワード | ストレス応答 / 腫瘍悪性化 |
研究実績の概要 |
以下の二つの柱について研究を実施し、記載のとおりの成果を得た。 柱1 獲得耐性:RACK1遺伝子(分裂酵母ではcpc2)がさまざまな種類のストレスを用いた獲得耐性に必要であることを示していたが(Biol Chem, 288: 19260-19268, 2013)、その分子機構は不明であった。RACK1免疫沈降物を質量分析することにより、ストレス応答時に特異的に結合するRACK1結合蛋白質として、mRNAの塩基修飾に関わる因子遺伝子を同定した。この成果は、RACK1を介したストレス応答がmRNA修飾による翻訳制御を介して行われる可能性を示唆しており、今後検討すべき重要な課題と考えている。研究分担者の若林は、RACK1flox/floxマウスと、上皮細胞特異的に発現するケラチン14プロモーター下でCre-ERを発現するK14CreERマウスを交配し、マウス皮膚にタノキシフェンを塗布することでRACK1欠損を誘導できるRACK1flox/flox K14CreERマウスを作成し、DMPA/TPAによる皮膚発がん実験を行った。その結果、RACK1はパピローマの成立と悪性腫瘍へのプログレッションに重要な役割を果たしていることが明らかになった。 柱2 弱いストレス特異的反応:分裂酵母を用いた順遺伝学的スクリーニングにより、47°C、2時間処理には耐性であるが、37°C、72時間処理の長期にわたる弱い熱ストレスに感受性をもつ変異株を複数同定した。それらの変異株のうち一遺伝子異常によると思われるものの全ゲノムDNAをNGSにより決定し、原因遺伝子候補を同定した。その一つはmRNA代謝に関わる因子をコードしており、柱1で得られた成果とあわせて興味深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年に始まった新型コロナウイルス感染症流行の影響により、本研究参画施設は2020年度の研究活動を部分的に制限せざるを得なくなった。具体的には、施設滞在時間の制限などのために本研究参画各グループは研究を予定通りに実施することが難しくなり、そのために、2020年度から2021年度にかけて研究費650万円の繰越申請を行い認められた。一方、最近の研究によって、弱いストレス応答にmRNA修飾を介した翻訳調節が重要である可能性が浮かび上がった。このことはこれまで報告されておらず、重要な成果と考えている。以上のことから、現在の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
計画しているふたつの柱について、以下の研究推進方策を立てている。 柱1 獲得耐性: 1)RACK1はリボソームに局在し、ストレスによる翻訳反応の停止応答に関わる可能性が実験データから示唆されているので、その仮説の可否を示す実験を行う。2)プロテアソーム阻害による獲得耐性がRACK1と同様に蛋白質ホメオスターシス不全によるのか否かを明らかにする。 柱2 弱いストレス特異的反応: 1)分裂酵母を用いたスクリーニングで同定された弱いストレス特異的反応に必要な遺伝子が実際にその役割を果たしているのか否かを分裂酵母および哺乳類細胞株を用いて検討する。2)これまでのところ、1)で得られた遺伝子の一つの産物がmRNA代謝に関わる蛋白質であることが分かっているため、柱1とあわせて、弱いストレス反応がミトコンドリアを含む転写・翻訳・代謝・蛋白質ホメオスターシスの統合的システム応答であることを検討する。 最終的に、柱1および2の成果を総合して、腫瘍細胞の悪性化に必要な非致死性ストレスを標的とすることが、本研究の目的である治癒をもたらす抗腫瘍療法の開発に資するのかどうかを判断し、本研究課題後の研究方針を策定する。
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