研究課題/領域番号 |
19J20514
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松井 一徳 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
キーワード | 流れ問題 / Stokes方程式 / 圧力Poisson方程式 / 圧力境界条件 / Navier-Stokes方程式 / 射影法 / 誤差評価 / 有限要素法 |
研究実績の概要 |
流体運動に対する数値解析手法の1つとして射影法があり,この手法では流体の非圧縮性を直接条件として課す代わりに圧力Poisson方程式を用いる.本年度はこの射影法と圧力Poisson方程式に関して次の2つの研究を行った.
1. 定常Stokes問題と対応する圧力Poisson問題の関係について調べるため,それぞれの解の間にある誤差に対して,境界値の差を用いた評価も行った.ここでは定常Stokes問題の境界条件として,応力境界条件と,流速が境界に対して垂直であり圧力が与えられている境界条件について考えた.この結果は【雑誌論文】欄にあるようにDiscrete & Continuous Dynamical Systems - Sに掲載された.
2. 射影法とオリジナルの流体問題での圧力の境界値が厳密に一致するような場合について調べるために,静圧または全圧を含む境界条件を課したNavier-Stokes方程式に対する射影法を考案し,そのスキームが安定であり,解が対応するNavier-Stokes方程式の解に収束することを示した.特に,安定性に関して流出条件を課す必要がなく,よく知られている流速に対して境界全体でDirichlet境界条件を課した一般的な場合の収束オーダーと同じであることを確認し,安定性・収束性共に良いスキームであることがわかった.ここで,全圧とは通常の圧力(静圧)に流体の単位体積あたりの運動エネルギーを加えたもので,ピトー管などの計測器を用いて実際に計測することが可能な物理量である.この結果については【学会発表】欄にあるように国内外の研究集会で発表をしており,現在論文を執筆中である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでのε-Stokes方程式に関する研究結果をベースに,圧力境界条件を課した定常Stokes問題,および非定常非圧縮Navier-Stokes問題に対する射影法へと研究対象を広げ,研究成果を得ることができた.圧力Poisson方程式を用いた射影法は,MAC法・SMAC法・粒子法などの流体シミュレーションで広く使われる重要な手法の1つである.圧力境界条件は,血管などパイプ内の流れや粒子法では本質的な境界条件で,工学や産業において多くの応用を持つが,これまでの数学解析・数値解析においてあまり取り扱われてこなかった.これらの課題に対し,精密な数学的枠組みとその解析手法を提案しており,期待以上の研究の進展があったと言える. また,2020年度はコロナ禍にあり,国内外の研究集会が中止やオンライン開催になってしまったが,その中でも積極的にオンライン開催された国内学会や国際会議で,積極的に成果の発信を行なってきた.
|
今後の研究の推進方策 |
まず,全圧を含む境界条件を課したNavier-Stokes方程式に対する射影法に関する研究結果を論文としてまとめる.さらに,Lagrange-Galerkin(LG)法を用いて,全圧を含む境界条件を課したNavier-Stokes方程式に対する数値解法の開発を進める予定である.LG法はラグランジュ的記述を用いて非線形項に関する計算を高速化する手法なので,同じくラグランジュ的記述を用いる粒子法への応用を考える上でも重要な問題である.
|