研究課題/領域番号 |
19J22440
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
BERNS LUKAS 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 水チェレンコフ / 素粒子 / ニュートリノ / 再帰反射材 / 事象再構成 / 機械学習 / 数値計算 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は再帰反射材や主成分分析によるチェレンコフ光の精密再構成の手法を開発し、現行実験や将来実験に導入できるよう、最適化や様々な誤差の検証などを行うことである。2年目の研究計画は再帰反射材の光学測定に基づいたシミュレーションにおける性能評価および実用的なプロトタイプの開発と実機での性能確認、また揺らぎを用いたリングフィッターの実用に向けた準備と誤差およびシミュレーション依存性の評価であった。
まずチェレンコフ光の揺らぎを活用したフィットに関しては動作時間の都合から機械学習を用いた再構成の開発にシフト。従来の再構成と比較してほとんどの変数で性能の改善を確認(概ね本研究の始まりにおいて見積もった通り)できた他、1000倍近く速い。国際学会(ワークショップ)での報告の他、新学術領域研究会の発表でポスター賞を受賞。誤差とシミュレーション依存性の評価に使える新手法も考案し開発を始めている。 再帰反射材の応用についてはコロナでの出張制限等を踏まえて技術開発のみを行い、実機での試験は行わないこととした。光学測定の結果をシミュレーションに取り入れ、機械学習を用いた再構成での性能を評価し、反射材による数10%の性能改善を確認。またこの改善が再帰反射材特有のもので、普通の鏡では得られないことも判明した。
本来の研究計画にはなかったT2Kのビームに関する研究も新技術開発を含め将来実験に向けた改良を進めていて、秋学会での報告で若手優秀発表賞受賞の他、Ninja実験(ニュートリノ反応断面積測定)の初結果にも貢献。メインアナライザーとして携わったT2Kの2020年振動解析はNeutrino国際学会で発表された他、Moriond国際学会や国内学会でも報告した。新しい統計手法の開発の他、スーパーカミオカンデの大気ニュートリノの合同解析に向けた振動確率計算やニュートリノ反応モデルの開発も順調に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り現実的なシミュレーションにおける再帰反射材の効果を確認できた。コロナの情勢もあり実機(宇宙線ミューオンまたは加速器ビーム)での測定を行わないことにしたため、プロトタイプ開発は最終年度の始めに変更。その分専念した揺らぎを用いた再構成は従来の再構成を様々な観点から上回る結果となりとても順調である。ニュートリノ振動の統計解析や、ビーム・フラックスの計算において当初の計画になかった新しい技術の開発に成功するなど、全体として順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
検出器の大きさやPMTの被覆率など様々な条件における性能改善の調査。ゆらぎを含めた再構成は機械学習を用いて従来の結果を単リングにおいては超えるものが出せるようになったので、これを複数リングに展開する他、データを用いた性能の検証手法の開発を進める。再帰反射材を入れるとリングの数が倍になるのでこの複数リング発生における解析は再帰反射材のある場合においても極めて重要となる 。これらの研究をまとめ、様々な用途の水チェレンコフ検出器での実装の妥当性についての議論を含めた論文にして発表する。元々計画していた小型水チェレンコフ検出器での確認を年内に行うことは現実的ではないが、本研究期間の後に計画されている水チェレンコフのビームテストで検証ができるように必要な情報をこの論文等で提供する。またT2Kの加速器ニュートリノ及びスーパーカミオカンデの大気ニュートリノを用いたレプトンCPの破れ及びニュートリノ振動パラメータの同時解析についての学位論文をまとめる。その他行なってきた様々な研究について、論文や国際学会での発表などで最終的な報告をする。
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