研究課題/領域番号 |
19K00021
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
竹村 亮 日本大学, 商学部, 准教授 (70583665)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 論理学 / 証明論 / 論証 / 不確実な推論 |
研究実績の概要 |
われわれが日常的に行う論証は、数学における証明とは異なり、不確実で反駁可能であり、そのため複数の論者間で議論・対話・論争が生じうる。このような不確実な推論を含む論証は近年、さまざまな分野で注目され研究が進められているが、論証の構造分析およびその評価・正当化の方法論は確立されていない。本研究では、数学における演繹推論を対象として発展してきた論理学証明論的手法を応用・拡張することで、不確実な日常的推論を含む論証、および議論・論争の数理モデルの構築を目指す。そのために、(I) 不確実な日常的推論を含む論証の証明論的分析と特徴づけを行い、(II) 論証の議論に基づく動的評価手法を確立する。 本年度は以下の研究を行った。 (1) 証明の正規化定理は、たとえば C→A&B と A&B→D からC→D を得る三段論法を、C→A とA→D、およびC→B とB→D の三段論法に還元することで証明される。この還元過程は、対偶をとると C→A&B とnot D→not (A&B) という対立する証明の間の対立点をさかのぼる議論・論争過程とみなせる。今年度は、前年度に引き続いて、このアイデアを数学的に形式化する作業に取り組んだ。 (2) 多数決を含む論理システム(Journal of Philosophical Logicに採択)のベースとなるシステムであるLogic with groupsは、各個人のみならず、グループにアクセプトされる論理推論を形式化したものである。今年度はこのシステムを基に、個人の合理性と集団(グループ)の合理性が乖離する状況についての論理学的分析に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に導入したLogic with groupsを用いて、個人の合理性と集団(グループ)の合理性が乖離する状況についての論理学的分析に着手した。 論証の動的評価方法を確立するために、前年度に引き続き、証明の正規化定理の対話的解釈を論理学的に形式化する作業を進めた。しかしながら、簡単にはいかずに苦戦し、また途中で他の業務による中断が何度か続き、現在ようやく形式化できる見通しは立ったが、研究は遅れ気味である。 また、新型コロナウィルスの影響で、オンライン授業と対面授業の両方の準備に必要な時間が増え、今後もしばらくはその影響が続くものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に基づき、以下の研究を進める。 I. 不確実な日常的推論を含む論証の証明論的分析と特徴づけ (1) 前年度に導入した多数決を含む論理推論システムの分析を進め、集団の合理性と個人の合理性が乖離する状況について分析を進める。(2) 多数決を含む論理推論システムと矛盾許容論理等との関係を研究する。(3) 固定された推論規則に限らず、より柔軟な形式の演繹推論への応用が試みられている証明論的意味論の手法を応用して、その演繹推論に限らない反駁可能推論への拡張を目指す。 II. 論証の議論に基づく動的評価手法の確立 (4) 証明論的基本定理の対話的解釈を数学的に形式化する。(5) 証明論的基本定理を応用した論証の動的評価方法を開発する。(6) 伝統的な論理学計算論の観点からAI argumentation framework を分析する。(7) 本研究における論証の構造分析および証明論的特徴づけの論理トレーニングやクリティカル・シンキングへの応用研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で、海外、国内ともに研究発表のための旅費に充てる費用がほとんどなくなってしまったため。 前年度に引き続き、今年度も論文執筆に注力し、そのための英文校正費用にあてる。また、在宅でも研究を進められるだけの必要な設備を整える。
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