本研究では、中世の諏訪祭政体における神長・守矢満実が著した『諏訪大明神深秘御本事大事』の解読に注力した結果、今まで中央政治体制に近い「伊勢流」などの神道流派でのみ観察・分析されてきた「両部神道」の儀礼/行法が、中央から遠く離れた信濃国諏訪においても「諏訪流神道」として相承されていたことが明らかとなり、中世諏訪における神仏習合の内実の解明に大きく貢献することとなった。さらに新たな課題として、諏訪流神道と両部神道との類似性にとどまらず、両部神道とは異なる独自の神仏習合儀礼/行法(例えば「諏訪流の胎生学的思想」)を生み出していった諏訪の文化的背景を探究する必要性が浮かび上がってきた。
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