| 研究課題/領域番号 |
19K00114
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| 研究機関 | 実践女子大学 |
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研究代表者 |
田中 靖彦 実践女子大学, 文学部, 准教授 (40449111)
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| 研究分担者 |
石井 仁 駒澤大学, 文学部, 教授 (90201912)
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| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | 続後漢書 / 蕭常 / 中国史学思想 / 劉備 / 正統論 / 中国思想 |
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| 研究実績の概要 |
令和三（二〇二一）年度は、『続後漢書』帝紀一・二および列伝一・三における贊を主な分析対象とした研究を進めた。同年度も前年度同様、コロナ禍の影響は少なくなく、研究の進捗は当初の想定より遅れ気味であるが、主に以下の点を明らかにした。
（１）諸葛亮傳の贊は、同書における贊の中でも際立って長文であるが、その内容は張南軒の説の引用という側面が強く、しかも著者である蕭常自身がそれを明記している。一方で蕭常は、諸葛亮評価に関して朱熹と張南軒が議論を交わしたことについて知っていた可能性が高いはずなのに、朱熹の諸葛亮評価については一切言及しない。このことは、当時における三国論をめぐる当時の論者たちの影響力を考えるうえで、重要な示唆を与えてくれる。
（２）帝紀一の贊は、諸葛亮傳の贊と異なり、蕭常独自の論という性質が認められる。贊の内容は劉備個人への評価というより、漢王朝賛美と、漢王朝延命への肯定評価ともいうべき内容になっている。そこからは、南宋の現況を蜀漢に（願望をこめつつ）投影していることが窺えるのであり、同様の特徴は帝紀二の贊にも見出すことができる。
（３）列傳一（后妃諸王傳）は、序があること、后妃に関する贊はあるが諸王に関する贊は無いことが目を引く。その贊は、劉備と呉懿の妹の婚姻を手厳しく批判しているのが大きな特徴であり、「昭烈が天下を統一できなかったのは、彼を正す賢臣がいなかったからであろうか」とまで言っている。蜀漢を肯定的に論ずる同史料でありながら、この婚姻をここまで強く批判する筆致からは、当時の士大夫たちの価値観をうかがい知ることができる。
上述の研究成果は「蕭常『續後漢書』諸葛亮傳贊について」（『實踐國文學』百、二〇二一年十月）、「蕭常『續後漢書』帝紀および列傳一の贊について」（『実践女子大学文芸資料研究所年報』四一、二〇二二年三月）として発表した。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和三（二〇二一）年度は、前年度に引き続きコロナ禍によって、校務および研究にも少なからぬ影響が出た。前年度よりは研究のための時間が確保できたが、研究のための出張は引き続き断念のやむなきに至った。
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| 今後の研究の推進方策 |
令和三（二〇二一）年度は、『続後漢書』著者の思想・著述に込められた意図について、同書における人物評価を手掛かりとして分析を行った。前述のようにその進捗状況は想定よりも遅れたものとなっているが、前年度に比して多くの成果があり、今後もこの方針に基づいた研究を進める。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
二〇二一年度も前年度に続きコロナ禍のため、研究出張を行うことができないなど、研究費の執行にも影響が出たため、次年度使用額が生じた。
次年度の使用計画であるが、研究出張が可能と判断した場合は出張を行い、不可能と思われる場合は書籍を中心とした物品費に多くあてる予定である。
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