旧約聖書の中で赤裸々に男女の恋愛を歌った異色の書『雅歌』を、神との神秘的合一への道行きの書として高く評価するオリゲネス出自の解釈伝統が、いかなる神学的、哲学的影響の下にどのような変容を被ったかを、古代末期の哲学諸学派とギリシア教父双方の文献において、検証・考察することができたこと、またその際、知性を超えた不可知の神との合一における欲求、情念、身体性のもつ本質的意義の再評価への転換を明らかにし、欲求の訓練・身体の使用という意味での自己への配慮という新たな人間学構想への展開を哲学及び教父学の文献において跡づけられたこと、以上が本研究の主たる成果である。
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