研究課題/領域番号 |
19K00158
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研究機関 | 静岡文化芸術大学 |
研究代表者 |
奥中 康人 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (10448722)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ラッパ / 西南戦争 / 洋楽受容 / 金管楽器 |
研究実績の概要 |
西南戦争(明治10年)において、陸軍によるラッパの具体的な使用法(曲目、シチュエーション、用法等)について、国立公文書館アジア歴史資料センターのアーカイブを用いて分析を行った。 同アーカイブを「喇叭」等のキーワードで検索し、抽出される約320件のデータ(主に西南戦役資料)は、(1)楽器としてのラッパについて、(2)ラッパを吹奏するラッパ手について、(3)ラッパ信号についての情報を提供してくれる。ここでは、とくにラッパ信号についてのデータを分析を進めると、数多くのフランスのラッパ譜が吹奏されていたことが確認できた。具体的な曲名を示すいくつか記録もあり(たとえばマーチの練習を支持する文書など)、これまでは判然としなかった当時のラッパ吹奏の実態が明らかになった。 また、調査の過程で、「喇叭暗号」という特殊用法が存在したことが判明した。ラッパ暗号とは、あらかじめ定めたラッパ信号を問答形式で交わすことによって敵・味方を識別するための用法のようなのだが、資料から読み取ることができるのは、ラッパ暗号が記載された手帳や文書が敵の手にわたり、何度も改正することを余儀なくされていたという失態が連続していたということである。ただし、ラッパの運用には問題があったものの、総じてラッパ手は何度も変更されるラッパ暗号に対処していた様子がうかがうことができ、明治初期のラッパ教育のレベルの高さを傍証することができる。 ラッパ暗号は、ラッパが軍隊と戦争に必須の道具であったことから、その需要も高まり、国内における金管楽器製造にも寄与した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスのため、とりわけ遠隔地(九州地方、および英国)への調査が十分ではない点があるものの、アジア歴史資料センターの西南戦争に関する文書類の調査は進展した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの今後の状況に左右されるが、予定では、前年度に予定であった九州地方での調査、可能性は低いが英国におけるラッパ譜調査を実施したい。 しかしながら、そうした調査が不可能になった場合は、これまでに入手した数種の明治初期ラッパ譜の比較分析(覆刻も予定)、明治初期のラッパ譜の変遷についての分析を行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスのため、当初予定の調査(遠隔地:九州地方、英国等)が実施できなかったため。
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