研究課題/領域番号 |
19K00172
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
増記 隆介 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (10723380)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 普賢菩薩像 / 世俗画 / 仏画 / 唐宋絵画 / コロンビア大学 / 宋代絵画 |
研究実績の概要 |
今年度は、前半において、東京国立博物館「普賢菩薩像」の修理事業に伴う調査を実施し、その輪郭線における墨線の使用について検討、これが世俗的な人物表現を取り入れることによって、菩薩に「生身性」を付与する意図に出たものであることを明らかにした。当該調査及び研究の結果については、「普賢菩薩の聖と俗 東京国立博物館普賢菩薩像の淡墨線をめぐって」(『日本美術史のつくられ方』羽鳥書店)として公表した。ただし、新型コロナウィルスの状況により3月末刊行予定であった当該書籍の刊行が遅延している。後半においては、8月末から12月上旬にかけ、米国コロンビア大学において客員教授として滞在し、Heian Period Buddhist Painting と題する13回の講義を英語にて実施し、これまでの研究成果を同大学修士及び博士課程学生に講義した。また滞在中に、メトロポリタン美術館(3回)、ボストン美術館、フリーアギャラリー、ニューヨークパブリックライブラリー、プリンストン大学美術館、イェール大学美術館において平安及び鎌倉絵画,中国宋代絵画の調査を実施し、これにはコロンビア大学大学院生、及び神戸大学大学院生も同行した。これらの研究成果は、日本語及び中国語にて日本及び中国において出版予定の「平安仏画と唐宋絵画 墨と色の問題として」(『日中文化交流史叢書』)として論文化し、これを投稿した。また、コロンビア大学における講義の成果として、英文の論文 Underlying the ‘Visions’ of Heian Buddhist Painting: The Flames of the Shoren’in Ao Fudo and White Gemstone Body of the Tokyo National Museum Fugen Bosatsu を神戸大学美術史研究室『美術史論集』に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査研究は概ね予定通り進捗しており、その成果も定期的に発表している。今年度は米国滞在によって在米日本絵画の調査に大きな成果を得ることができた。また、大学院学生を在米作品調査に同行することによって、米国における日本美術研究の現状や課題、美術館博物館における日本美術の展示等に関する知識を学生が身につける機会を与え得たことは、今後の日本美術史研究が世界的な結びつきにより進展してゆくための基礎を作る作業になったと考える。また、個人的には、ヴァージニア州立美術館などに平安絵画の専門家として招聘され、その所蔵作品の調査等に寄与したことは、より広い範囲の在米日本絵画の知識を得る機会となった。 後半においては、新型コロナウィルスの席巻等により、海外調査が不可能となり、これらについては来年度以降、ウィルスの状況等を見ながら鋭意進めてゆきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本年は、主に世俗画の重要遺品の調査を実施する予定である。これについては、現在、京都国立博物館「山水屏風」及び神護寺「山水屏風」(東京国立博物館寄託)の調査の許可を得て、実施を予定しているが、新型コロナウィルスの影響により、博物館が閉館となり対応できない状況となっている。これらの作品は、平安時代の世俗画遺品を考える上で基礎となる作品であり、状況を見ながら調査を実施したい。また、在外作品の調査も実施が困難な状況となっているため、今年度は基本的に国内調査を推進するとともに、資料収集等に務めることによって、課題をこなすこととしたい。また、これまでの成果について、引き続き日本語及び英語による論文を発表、また機会を得て、シンポジウム発表(東京国立博物館「鳥獣戯画展」に合わせて実施予定)等を行い、研究成果を広く後悔することに努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度末に予定していた中国調査が新型コロナウィルスの影響で実施できなかったため。 来年度時期を見計らって実施したい。
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