本研究の目的は、美術家の健康と安全確保およひ環境保全に関する欧米の先進の取り組みの内容を調査によって明らかにし、(1)美術家の危機管理意識改革、 (2)労働安全衛生水準の向上、 (3)美術家・美術教育機関の支援システムの構築に活用することである。 最終年度となる本年度は、国内外の銅版画教育の現状調査に注力した。教育機関や個人アトリエにおける銅版画教育について、実地訪問やインタビューを通じて情報を収集した。また、国内外で流通している銅版画技法書や指導書を収集し、それらの内容を詳細に検証した結果、特に科学的根拠の説明に誤解が含まれているなど、銅版画制作者の科学リテラシー育成に多くの課題が残されていることが明らかになった。 銅版画制作で使用する化学物質や薬品の安全性や環境への影響についての意識向上をどう実現するか。次世代型銅版画教育プログラムの研究開発に取り組み、新しい教材や指導法の開発、持続可能な素材や方法について検討した。 こうした一連の研究成果を冊子『科学で検証!銅版画制作の疑問』(A4変形40Pフルカラー)にまとめ出版した。本書では、銅版画制作における様々な疑問について科学的な視点から解説し、より安全で効果的な銅版画制作のための新たなガイドラインを提案した。
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