アポロニオス『円錐曲線論』の図版を,全ての現存ギリシャ語写本の原型であるVat.gr.206に基づいて再描画した.円錐曲線はすべて円弧に置き換えられていて,この難解な著作はさらに困難なものとなっている.また数学的に正確な図版を描く支援プログラムを開発した. エウクレイデス『原論』の図版に見られる「過度の標準化」は,『円錐曲線論』では比較的少ない.このことは,過度の標準化が書写の過程で起こったという主張を否定する根拠になる可能性がある.しかし『円錐曲線論』の現存版は6世紀のエウトキオスに由来し,この難解な著作の書写回数が少なかったために過度の標準化を免れたという可能性もある.
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