研究課題/領域番号 |
19K00313
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
恋田 知子 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (50516995)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 絵巻 / 奈良絵本 / 年中行事 / 尼寺 / 絵入り版本 / 月次絵 / 出版 / 17世紀 |
研究実績の概要 |
本研究は『十二月絵巻』の基礎的研究により17世紀後半の絵巻制作の実態について解明を試みるものである。江戸前期の年中行事を絵画化した『十二月絵巻』は、奈良絵本・絵巻の一作品に相違ないが、一部に物語や説話は見られるものの大半は風俗の解説であるため、資料紹介にとどまり、文学研究からも美術史研究からも主たる研究対象とはされないまま、放置されてきた。しかしながら、諸本間で大小の異同を有しながらも、同種の絵巻が17世紀後半に集中して多数絵巻化された点はより重視すべきだと考える。諸本のなかには、装訂や画風、詞書の筆致から同時代の物語絵巻との共通性が認められるものもあり、当代の絵巻・奈良絵本の制作実態を考察する上でも看過できないものがある。 今年度はこれまで単発的な紹介にとどまっている本作品の全体像を把握するため、歴博蔵『十二ヵ月都風俗絵巻』など伝本の調査・収集に努めた。あわせて、チェスタービーティ・ライブラリィ蔵『十二月遊び絵巻』および慶應義塾図書館蔵『十二月』の詞書書写者である朝倉重賢の筆である国文研蔵『子易の本地』の分析にも着手した。特に絵入り版本との影響関係から17世紀後半の絵巻制作の様相について考察をまとめ、2019年9月に筑波大学で開催されたEAJS 日本会議において、“Illustrations in Print and the Production of Illustrated Scrolls in the Latter 17th Century:The Case of the Illustrated Scroll Koyasu no honji (National Institute of Japanese Literature Archives)”と題した口頭発表をおこない、多くの貴重な示教を得た。同様に、17世紀後半の絵巻・奈良絵本制作の具体相について考察をまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はコロナ禍により年度末に予定していた国内外の出張を取りやめ、あるいは延期したため、本研究の主対象である『十二月絵巻』の基礎的調査については予定よりも遅れている。ただし、同時期の絵巻として注目される国文学研究資料館蔵『子易の本地』の分析に着手し、国際学会で口頭発表をおこなったことで、問題点が明確となり、新知見も得られ、本研究遂行のための一助となった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍により、今後予定している海外への調査や国際学会での発表なども検討を余儀なくされることが想定される。調査対象の拡充をはかるなど、円滑かつ柔軟に対応していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、予定していた国内外の出張を取りやめ、あるいは延期したため。
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