研究課題/領域番号 |
19K00313
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
恋田 知子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (50516995)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 絵巻 / 奈良絵本 / 朝倉重賢 / 嫁入り本 / 絵入り版本 / 絵草紙屋 / 小絵 / 国籍類書 |
研究実績の概要 |
本研究の中心課題である17世紀後半の奈良絵本・絵巻制作の実態解明を目指し、17世紀後半に集中的に制作された嫁入り本の具体相について考察し、「一七世紀後半の絵巻と女性―『子易の本地』を例として―」としてまとめたものが公刊された(『説話文学研究』58号、2023年9月)。 また、寛文・延宝(1661-81)頃書写の小絵として注目される天理大学附属天理図書館蔵『常盤の嫗』絵巻の分析を中心に、先行研究に拠りつつ、現存諸本について天理大学附属天理図書館、富山市立図書館、慶應義塾図書館での調査を踏まえて考察をまとめた。天理図書館蔵『常盤の嫗』絵巻は他の絵入り諸本に比して、濃彩で色鮮やかに描き込まれた絵を付す点に特徴があるとともに、本文に忠実でありつつも姥の現世への執着と往生による救済をいわば本文を超えて描き出そうとする点に意義が見出せる。また、現存諸本のうち、本文においてとくに近似する天理図書館蔵国籍類書所収本と富山市立図書館蔵『物ねがひのうば』について、その伝来と享受層についても検討し、寛永年間の嫁入り本制作の実態解明の一例として、国籍類書本全体の調査・分析にも着手した。上記の研究成果の一端を「『常盤の嫗』の享受圏―嫁入り本としての意義―」として、『日本文学研究ジャーナル』第30号(2024年6月刊行予定)に寄稿した。 加えて、都の月毎の祭礼風俗を絵と詞で綴った『十二月絵巻』の研究の一環として、銚子市圓福寺蔵『十二月あそび』などの絵巻の調査をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
17世紀後半の絵巻制作の実態解明を目指そうとする本研究の課題の遂行という点では、おおむね順調に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の未使用額を有効に活用し、関連資料の収集や調査に努めるとともに、延長年度の成果報告に向けて円滑かつ柔軟に対応したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍や円安の影響により当初計画していた海外の出張を見送るなど、変更を余儀なくされたため。 今年度と同様、17世紀後半の絵巻・奈良絵本制作に関わる資料や文献の収集と分析に努め、延長した最終年度の成果報告に向けて適宜計画内容を修正するなど対応したい。
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