江戸時代の大名が多くの書物を収集していたことは知られているが、それらの蔵書の多くは明治維新後、旧大名家の経済状況が悪化する中で売却され失われてしまった。これらの蔵書のうち、現存するものは蔵書印を頼りにその内容をある程度復元できることが分かったことは、蔵書印の重要性を裏付けるものでもある。また、小笠原家の蔵書印は使用時期によって二種類あることも分かり、江戸後期から明治にかけて押されたものである可能性が高い。このことからは、蔵書印によって藩主のコレクションを管理するようになったのが他藩に比べても遅かったことが分かる。今回の研究成果は蔵書印の文化についても新たな問題を提起することになると思われる。
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