研究課題
本研究の目的は、古代・中世の翻訳文学を通して、同時代の日本人自身が自国の文学のコードとして意識していたものを浮かび上がらせ、さらに「訓読」「翻案」「注釈」と「翻訳」との差異がどのように意識されて翻訳文学が作られたのかを解明することを目的とする。さらに「訓読」「翻案」「注釈」および「翻訳」という営為の質的差異を検証し、和漢の言語・文化コードの差異、特に翻訳者自身に意識されていたと考えられる自国の文学コードを明らかにすることを目指すものである。延長期間にあたる2022年度は、個別の研究課題②【「和歌」における「翻訳」】という観点から、竹島が、連歌師宗砌を対象に個別の研究を進め、宗砌句の自注の分析からその漢詩文摂取の様相を考察し、論文として公開した。小山は歌学用語「鸚鵡返し」を取り上げ、人の言語を模倣する、異国の鳥としての「鸚鵡」認識を論じた。③【「学問」における「翻訳」】という観点からは、森田が『唐鏡』の前漢部の『史記』『漢書』の利用方法を検討し、作中に多数見られる『漢書』五行志の摂取が著名故事に傾きがちな叙述を編年的に歴史叙述として維持する役割を果たしていることを考察し、論文として公開した。さらに、全体の研究課題①【基盤的研究としての資料整備を含む翻訳文学研究】として2021年度に作成公開した「古代・中世句題和歌一覧(稿)」を補うものとして、小山が『楢葉和歌集』所収の句題和歌を取り上げ、従来の句題和歌の範囲に留まらない、南都の学僧の関心の反映を指摘し、論文に公開した。なお、同論では『新三井集』『続門葉集』の句題和歌についても触れている。
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南山大学日本文化学科論集
巻: 23 ページ: 35-62
女子大国文
巻: 171 ページ: 93-126
アジア遊学
巻: 275 ページ: 206-211
日本文学研究ジャーナル
巻: 23 ページ: 9-23