研究課題/領域番号 |
19K00520
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福田 義昭 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (60390720)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アラブ / 近代文学 / 地理的想像力 / 空間表象 / 世界観 |
研究実績の概要 |
本研究は、近代アラブ世界の文学作品等が「地理的世界」をいかに表象してきたか、その概要を把握することを目的としている。文学作品をはじめとする多様な文化的テクストを題材に、さまざまな「地域」、「国民国家」、「アラブ世界」、「西洋と東洋」、「西欧とアメリカ」、「アジア」や「アフリカ」、「イスラーム世界」などがどのように認識され、表象されてきたかを分析する。それによって、近代アラブ人の「世界」観の変遷や空間的アイデンティティの変容を解明するための手がかりを得たいと考えている。 初年度は、研究環境の整備として、まず関連分野の基礎文献や工具書、研究資料、対象となるテクストの収集を行った(アラビア語および欧語文献)。また二つの研究発表を行った。(1)シンポジウム「歴史を創作する──中東《時代小説》の現在」(7月)のパネル・ディスカッションでは「エジプトの歴史小説」と題し、重要な作家たちを紹介するとともに、作品の舞台を示しつつ、彼らが過去を想像/創造するときの空間的範囲にも言及した。アラブ各国の作家らが「過去」をどのような地理的領域にわたって想像/創造しているかという点は、今後さらに深く分析すべきテーマとなった。(2)ワークショップ「音楽とグローバル関係学」(11月)では「アラブ諸国国歌研究の課題と展望 ──エジプト国歌の事例を中心に」と題する発表を行った。アラブ諸国の国歌(特に歌詞)を、使用言語や語彙、国民意識、アラブ意識、イスラーム意識等の面から概観し、他地域と比較した際の顕著な特徴や興味深い点を指摘した。国歌はナショナル・アイデンティティを象徴的に表現するテクストの一つであり、その選定・制定過程、変遷、受容と実践などを分析することは、アラブ地域に対する理解の深化に貢献するだろう。これもまた、継続して追及すべきテーマであると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では元々かなり多様なサブ・テーマを設定しているが、途中でさらに国歌研究をも組み込んだため、扱うべきテクストの範囲が増え、分析に予想以上の時間がかかっている。論文の形での研究発表は、二年目以降に持ち越しとなった。また、3月にエジプトでの資料収集および研究者との会合を予定していたが、新型コロナウイルスの流行により、これも中止せざるをえなくなった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、国歌研究・歴史小説研究を行いつつ、2019年度は留学生小説や旅行記などの読み直しをはかり、とくに「西洋」や「東洋」の表象を再検討したい。また、海外渡航が可能になった場合、昨年度実施できなかった分も含め、アラブ二ヶ国(エジプトとオマーンを予定)での調査および資料収集を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に予定していたエジプトでの調査が新型コロナウイルスの流行により取りやめとなったため。今後、海外渡航が可能な状況になれば、その分を次年度のエジプトでの調査にあてる。
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