柳宗悦の朝鮮工芸に関する言説研究は概ね朝鮮民族美術館が設立された大正期の言説分析に集中し、民藝運動開始後の昭和初期についてはそれほど研究の蓄積がなされていない。本研究テーマはその不足を補うことに第一の学術的意義がある。 また民藝運動と朝鮮工芸言説との関係性から柳の工芸美論をどのように評価するのかという点についても従来あまり分析の対象とはされてこなかった。朝鮮に対する柳の言説は大正から昭和までの全体を通して評価されてきたが、本研究では民藝運動が開始され彼らが日本国内の民藝調査をすることで得られた視点や民藝産地への眼差しが、朝鮮言説に反映されていることを明らかにした。この点が第二の学術的意義である。
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